アランセーター
アランセーターは自他共に認める当店の看板商品です。お客様の問い合わせもずば抜けて多いことから、アランセーターだけ別項目で取り上げることにしました。
  
§アランセーターとは
§価格表
§セーターの色及びサイズについて
§在庫リスト一覧
§ご購入について
§同業者の方へ
  
ヴィンテージ・アラン
約20年前に編まれたVカーディガンのデッドストックを特別販売します。
詳細はこちらをご覧下さい。
   
§アランセーターとは
       『アランセーターの真実』 文・野沢弥市朗
 (本文は、自著『アイルランド/アランセーターの伝説』の一部を要約したものです。)

 「アランセーター」をご存じだろうか。
 一般には単に「フィッシャーマンセーター」とも呼ばれ、わが国でも1970年代初頭に大流行した、縄編みの柄が浮き出すように入った白いセーターであり、その発祥は、アイルランド西岸のアラン諸島で女たちによって編まれたものである。そして、今でも島ではこのセーターが編み続けられている。
アランセーターの伝説  
 このセーターは、従来から以下のような物語が伝えられている。
 アランセーターは6世紀の昔からアラン諸島で編み続けられており、その独特の編み柄には、漁に出る夫の無事と豊漁を願う女たちの祈りの意味が込められている。その組み合わせは、家々の編み手によってあたかも家紋のごとく異なり、それは母から娘へと伝承されている。
 万一、不幸にも漁での溺死者が岸に打ち上げられたときには、着ているセーターの柄でその身元が判断できたといわれる。
 荒海に漕ぎ出す男たち、それを優しく包む女たちの愛。このストーリーは、アランセーターが世界に普及するにつれ、皆に知られるようになり、いつしか伝説とまで言われるようになっている。
ある老人との出会い  
 私は、静岡市で洋服屋を営む者であるが、このセーターを四十年にわたって世界に紹介し続けたアイルランドの元弁護士パドレイグ・オシォコン氏と十年程前に出会って以来、アランセーターの魅力にぞっこんとなり、本業のかたわら、彼の日本でのエージェントを務めている。
 そして、六年前に彼が九十歳の天寿を全うしたとき、どうしてもこのセーターの記録を残しておかねばならないと思い立ち、ずっと調査を進めてきたが、それがこの程ようやくまとまった。
アランセーターの発祥
 アラン諸島は、アイルランドの中でも土着のケルトの風習が色濃く残る異郷の島として、J.M.シングの随筆「アラン島」やR.フラハティ監督の映画「アラン」によっても知られている。草木もろくにない岩だらけの貧しい小さな島、毎日の漁すら命懸けの過酷な生活。この島で、アランセーターは、いつ、どのようにして生まれたのであろうか。
 幸いに、英、米、アイルランドのニット愛好家やファッション・ジャーナリストによって、この謎の解明はすでにほぼなされていた。それらの文献を当って分かった真実は伝説とはかなり異なるものであった。
 伝説では6世紀とまでいわれていた発祥の時期は、実は20世紀初頭であった。アラン諸島の漁業基地に出入りしていたスコットランド人家族のガンジーセーターがベースとなり、そこにアメリカ帰りの天才的編み手の女性が持つ技巧が融合し、島独特の派手好みの美的感覚から、見事な装飾性あふれたセーターが出来ていったのだった。
 普段編むのはガンジーセーターと同様に紺色だったが、教会の堅信礼(わが国の元服式にあたる)に際し、母親は十二歳になる息子の晴れ姿のため、とびっきり豪華な白いセーターを編んだのだった。
英国に渡る
 1935年、女性地位の向上活動をしていたミュレイル・ゲインという女性が島にやってきて白いアランセーターを見つけ、首都ダブリンの自身の店に置く。翌年、その店を訪れたのが、H.E.キーヴァという服飾評論家で、彼は自らの推論でこれを英国に紹介する。
 「アラン諸島では世界のどこにも見られないセーターが編まれている。見事に装飾的な編み柄が施された白いセーターで、これは6世紀にこの島へ渡った聖人エンダによってもたらされたものである。」と。
 そして、あろうことか、彼は、スコットランドでこのセーターのイミテーションを作らせ、英国内で販売する。恐らく、これには、彼が英国に亡命中のユダヤ人であったという、大戦時の特殊な国際事情も関係していたように思われる。
 伝説はこうして流布を始めたのだった。
戦後の対米輸出
 長年の英国支配から脱し1949年に念願の独立を果たしたアイルランドは、積極的な対米輸出政策をとった。アランセーターはその最重要品目であり、その役割を担ったのが、わが恩人P.オシォコンであった。
 しかし、当時のアランセーターはまだ家族のためだけにいわば自家用として編まれていたものだったので、ウールはベタベタで臭いも強く、またサイズもまちまちと、とてもそのままでは売り物にはならなかった。
 彼は自ら島に長期滞在し、編み手の組織化や仕上がりレベルの標準化など、売れる商品としての生産態勢を整え、家内制手工業としての形態を作り上げた。
 このセーターにいち早く注目したのが、1956年のクリスチャン・ディオールであった。雑誌「ヴォーグ」や「ハーパーズ・バザー」は、このパリの最新トレンドをアメリカに伝えていったのである。
 そして、六〇年代前半、アランセーターはアメリカで大ヒットを迎える。当時の大統領は、かのJ.F.ケネディ。アイルランド移民の子孫である。移民として苦労を重ねてきたアイリッシュ・アメリカンたちがようやくにひとかどの地位を築き上げた時代であった。おらが故郷の、伝説を持つほどのセーターを歓迎しないなずはなかった。
 1961年、当時アイドル的存在とも言えたアイリッシュの四人組フォークグループ、クランシー・ブラザーズは、揃いの白いアランセーターを着て、エド・サリバン・ショーに出演。わずか16分の放映だったが、これが全米大流行のきっかけになったのだった。
 この当時、あるアランの編み手は、年間に四十一枚ものセーターを編んだという記録がある。平均九日で一枚という驚異的スピードだ。それ程に需要があったのだ。
そして日本へ
 1964年12月発行の雑誌「メンズクラブ」第四十号、巻頭グラビア。ダーツに興じる若者たち。見事に美しいアランセーターを着ている青年がいる。当時カーレーサーとして欧州を歴戦していた式場壮吉であった。彼は、このセーターをパリのディオールで手に入れたが、グラビアの撮影時に同席した、ヴァン・ヂャケットの石津祥介(創業者・謙介の子息)に懇願され譲ってしまう。その後、ヴァンはこれを「フィッシャーマンセーター」と銘打ち、わが国に大流行させたのである。
島の現状
 六世紀という伝説は大袈裟にせよ、しかし、アランセーターは百年の間、今も編み続けられている。母から娘へ設計図もなく、それは伝説のとおりだ。百年間も発祥の地で変わらずにしかも商業的に編み続けられているセーターなど、世界でもアランをおいて他にない。これは、このセーターが人を魅了する美しいセーターであったという他ならぬ証しでもある。
 しかし、その伝説も途絶えつつある。今日、ケルトのノスタルジーと荒涼とした風景美を求めてアラン諸島を訪れる観光客は、年間十万人を超える。このおかげで、島の人たちはもはやセーターを編まずとも「食っていける」ようになったのだ。
 島の七十歳以上の女性は大概編むことができるが、それでも恒常的に常日頃から編んでいるという人数は恐らく四十人を割っている。最も若い女性でも四十歳ぐらいで、それより若い層には継承されていないのが現状だ。
 現在、年間で編まれる枚数は三、四百枚程と推定される。島の外へ出るのが二、三百枚、その大半はわが国へ送られている。他は島の観光客へ直接売られる。きっとあと数年で、編み手も激減し、島へ行かないと手に入らない希少品になることだろう。アランセーターの灯はもうかなりか細いものになっていると言わざるを得ない。
 かつてローマ法王への献上セーターをも編んだ、島一番のニッター、モーリン・ニ・ドゥンネルも六十五歳を機に、商売として編むのをやめてしまった。今は、家族たちのためだけに自らの楽しみとして編み棒を動かす毎日を過ごしている。私は彼女の穏やかで囁くような語りを思い出している。「このセーターは私が編んでいるのではありません。神が私に編ませてくれた、神様からの贈り物なのです。」

 一枚のセーターに、こんな歴史と物語がある。アランセーターを手に入れること、それは単に高価な手編みセーターを買うというだけにとどまらず、この物語の参加者の一員になることを意味するのではないだろうか。
(野沢弥市朗 / セヴィルロウ倶樂部・店主)
           記・2001年10月
§価格表
 価格(税込)は、スタイルによって下記の通りとなります。どの色、どのサイズも同じです。送料は、アランセーターのご購入に限り、当方にて負担いたします。(ただし、日本国内に限ります。)
ウール100% 丸首プルオーバー \53,000
ウール100% タートルネック・プルオーバー \54,000
ウール100% 丸首カーディガン(衿なし) \57,000
ウール100% 衿付き丸首カーディガン \59,000
§セーターの色及びサイズについて
編み手について

 私どもが扱うアランセーターは、すべて、このセーターの発祥地、アイルランド・アラン諸島のイニシイア島またはイニシマン島に住む女性によって編まれたものです。アラン諸島以外で編まれたものはありません。
色と糸について

 私どもでは、アランセーターの色を、下記のように呼んでいます。

Bainin(バイニン)…いわゆる、キナリ(生成り)です。ゲール語で「そのまま」の意味で、アランセーターでは、最もよく知られた色です。糸は、ゴルウェイ社別注の特殊なもの。もちろん、未染色で、脂分が程良く残る程度に軽く洗浄しています。時々「まったく脱脂していない糸のモノはないのですか」という、お問い合わせをいただきますが、恐らくその方は、未脱脂ウールというモノを知らない方でしょう。臭いも強く、触るのも気が引けるほどベタベタで、とても快適に着られるものではありません。実際のところ、アラン諸島でも未脱脂ウールでセーターを編んでいた、という事実はありません。

GreySheep(グレーシープ)…グレーの羊の毛で、これも、染めていません。

Black&Silver(ブラック・シルバー)…いわゆる「茶色」に相当します。こげ茶の羊(ブラックシープ)の毛だけだと、べたっとした濃い茶色になってしまうので、これに、グレーシープの毛を混ぜ合わせて、編み柄の立体感をわかりやすくしています。もちろん、これも未染色です。

ネイビー染め(Navy Dyed)…「紺」です。フィッシャーマンブルーともいわれるように、実際に漁師が着ているセーターの多くは、紺色です。かつては、バイニンやグレーシープで編んだものを製品で釜に入れて後染めしたようですが、それでは加熱で風合いが劣化してしまうのと、どうしても染めムラが出てしまうので、今は、先染めした紺色の糸から編んでいます。
サイズについて

 表示サイズは、胸囲の寸法をインチで表記したものです。
 ただし、最初にお断りしておかなければいけないのは、アランセーターは、その編み柄が一枚ずつ違うように、サイズもまた一枚一枚が異なるということです。ですから、サイズはあくまでも目安に過ぎない、ということをまずご理解下さい。「自分のおばあちゃんが、孫のために編んでくれた」といった、おおらかな気持ちでないと、アランセーターは購入できないでしょう。

 表記サイズを、一般の日本人の体型に当てはめますと、おおよそ以下の通りになります。
36 38 40 42 44 46
女性のS 女性のM 男性のS 男性のM 男性のL 男性のLL
 個々の寸法については、セーターごとに添えてある実測表をご覧下さい。着丈、袖丈、袖廻りなど、同じサイズ表記でも、かなりばらつきがあることがお分かりいただけると思います。
 
 実測表について、ふたつほど、ご注意を。まず、計っているのが伸縮性のあるニットですので、実際の着用では、かなり伸びるということです。例えば、E裄丈などは、首の後ろから袖口までを直線で計っていますので、数値はすべてかなり小さいですが、実際着てみると、極端に短いものはありません。また、肩巾ですが、これは、単純に身頃のパーツと袖のパーツとの縫い合わせの位置で計ったもので、編み手によって、まったくのセットインで垂直的についているモノもあれば、ラグランっぽく斜めに袖付けしているものもありますので、数値にかなりの開きがあったとしても、着用に際しては、ほとんどこの数値は無視していただいて構いません。

 ときどき、「縮みますか」と聞かれます。もし漁師のようにこれを着て海に出てずぶぬれになるような着方をするのならば縮みますが、普通の着方をする限りでは、縮みません。むしろ、着ていくうちに身体になじむのと、セーター自体の自重で、大きくなったように感じるはずです。逆に、縮ませたいのならば、セーターを熱湯に浸して、コインランドリーのような高温乾燥機に放り込んで下さい。ウールがフェルト化して確実に縮みますが、どのくらい縮むかは結果次第ですので、保証の限りではありません。
柄について

 写真は、表と裏を両方撮影しています。原則的に同じ柄ですが、希に違うものもあります。また、カーディガンの場合は、フロントにボタンが入りますので、必然的に前と後は柄が少し変わります。濃い色のセーターは、柄が見えにくいものもありますが、その際は、パソコンのディスプレーの照度を出来るだけ明るくして見てみて下さい。何とか判別できるはずです。
手入れについて

 「手入れはどうしたらいいですか」と、よく聞かれますが、一番いいのは「何もしない」ことです。ブラシを当ててほこりを払うだけで、特別な手入れの必要はまったくありません。
 それでも、洗いたいという場合。ドライクリーニングもできますが、ドライに出すと、どうしても毛糸が硬化してしまうこと、また、脂分が抜けてしまうこと、これは避けられませんので、ご理解下さい。お薦めするのは、手洗いです。最近の洗濯機には「手洗いモード」という、優しい回転を選べるものも増えてますので、こういう洗濯機ならば機械洗いも可能です。一番手っ取り早いのは、信用できるクリーニング業者に「手洗いで」と、依頼することでしょう。

 糸がほつれた場合。手編みセーターですので、糸の継ぎ目などで、ほつれが出る場合があります。自分で結べる程度なら、裏から結び直していただくだけで直ります。もし、糸が足りない場合はご連絡いただければ補修用の糸をお送りします。また、大きくほつれてしまったり、虫食いなどでかがりが必要な場合は、当方まで製品をお送りいただければ、実費で補修いたします。
§在庫リスト一覧
丸首プルオーバー
(\53,000)
タートルネックプルオーバー
(\54,000)
丸首カーディガン
(\57,000)
衿付き丸首カーディガン
(\59,000)
§ご購入について
 アランセーターについても、当店の他の商品と同様に、代引き配送やクレジットカード(クロネコ@ペイメント)の利用によるご購入が可能です。「商品の販売について」をご参照下さい。
 ただ、商品の性格が特殊であり、しかも、高価なものですので、ご購入をご希望の方は、まずは、当方まで、メール(info@savilerowclub.com)などでご連絡を頂戴したく存じます。その上で、あなたに最もふさわしい一枚を一緒にお選びして差し上げたいと、願っております。

 ご連絡をいただく際には、下記の項目をお知らせ下さい。品選びの目安となります。
@ご希望のスタイルと色
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§同業者の方へ
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