倶樂部余話【八十六】開店10周年を迎えて(一九九六年八月二二日)


1987年9月1日開業の当店は、いよいよ10度目のシーズンを迎えます。もう10年か、あっという間だな、と思っています。開業当時をご存知の方で、10年後の今の店の姿を想像できた方は一人としていないことでしょう、私自身を含めて。

それほどに、私自身成り行き任せで好き勝手にやらせてもらってきた感が強いのですが、それでも振り返れば、いくつかのターニングポイントらしきことが見当たります。中でも、バブル崩壊・価格破壊・低成長経済でメンズショップ自体の存在意義が大きく変化、当店も徐々に中心ターゲットを、当初の親子二世代狙いから、戦後生まれの夫婦客に絞り変えていったことが、今の店作りにかなりの影響を与えています。

また93年秋に横浜そごう・アイルランドフェアで、初めて店から出てアランセーターを販売したことは、当店を全国区レベルの店として認めてもらえるようになっていく契機でもありました。ミニイベントを次々に開催した時期もありましたね。この告知が「倶樂部余話」の月例化になり、今のメンバーズ制度に続きました。

品揃えに関しては、その時代時代に自分なりにベストを尽くしてきたという自負はあります。その結果で「○○ならこの店だよね」という「ならここ」商品の分野はかなり持ち駒が増えてきたように思います。

「こんな店は静岡で成功しない」「モノになるまで何年かかるやら」と言われ、意地でも10年は頑張るぞ、と誓ったその10年目の秋冬、かつてないほどに自信ある「ならここ」商品を集積しました。ざっと分野別にアピールさせていただきます。
 
☆メンズ・オンタイム分野…スーツとシャツは、オリジナルのオーダー受注を強化。価格帯も生地も選択の幅を拡げました。試着見本も充実させて既製服並みの安心オーダー。靴は当店だけの英国製別注チャーチに初挑戦。
 
☆メンズ・オフタイム分野…英国調のセーター&アウターコートの二分野にかけては、当店の内容は全国に誇ってもいいと思います。
 
☆レディス分野…バランスのとれたトータルな品揃えをあまり意識せず、得意なモノ他にないモノをぐいぐい押していくことにします。三本柱は、ニット、コート、ケープ&マフラーの纏いモノ。ほとんどが直輸入モノです。

仕込み万全、当然、過去最大の売上予算を組んでます。気合いの10年目、どうぞ大いにご期待下さい。