倶樂部余話【一一〇】手提げ袋の一考察(一九九八年七月二〇日)


お店から持ち帰る様々な紙袋、どこのお宅でも溜まる一方ではないでしょうか。何かのためにと取っておいても、例えば、伊勢丹に行くのに松坂屋の袋は持てないとか、食べ物を靴屋の袋には入れたくないとか、結構その使い道には気を遣います。

一般的には、手提げ袋は宣伝物として考えられていて、売る側はお客様に「歩く広告塔」の工作員を演じてもらうことを期待しているわけですが、かえってそれが紙袋の再利用を阻害しているとも言えます。

ならばいっそ、ということで、当店では、新たに追加する手提げ袋から、大きな店マークの印刷を外してしまうことにしました。店名は目立たない箇所に小さく印刷するにとどめてます。丈夫な素材を使った原価二百円以上するしっかりした作りの袋ですので、どうか気遣いすることなくいろいろな用途にどんどん再利用していただきたいと願っています。

近ごろ目にする「この○○には再生紙を使用しています」という文言、これに私は企業の偽善者的姿勢を感じてしまって、実はあまり好きになれません。わざわざ書く必要がどこにあるのか分かりません。商人にとって一番身近なエコロジーは、無駄になるようなものをお客様に提供しない、ということではないでしょうか。商品にせよ、手提げ袋にせよ。