倶樂部余話【一二三】ライセンス・ブランド(一九九九年九月一日)


小話。ある女子校での校内放送。「ハンカチの落とし物が届いてます。モリハナエさん…」

小四のうちの娘は、デイオールをスリッパのマーク、ジバンシーをタオルの印だと信じています。

これらの笑い話はどれも「ライセンス・ブランド」という奇妙な仕組みが原因です。

この秋、当店から三つのライセンス・ブランドがなくなりました。ギーブス&ホークス、スキャパ、ハケット。いずれもライセンス品を生産する日本のアパレルが、リストラの一環で撤退や縮小を余儀なくされたのが理由です。どこも本国のビジネス自体は順調で、私は直接に本国のオーナーとも面談し、そのブランドコンセプトにも敬服していたので、彼らと縁が切れるのはいささか残念ですが、やむを得ません。

思えば、当店が大幅に輸入品を増やしていた頃、同業の仲間から「そんな商売は危ない。大手のライセンス品を扱うのが最も安全な仕入れだよ」と揶揄されたものでしたが、時代は変わったものです。元気なアパレルは小売店に商品を卸さず自前で店を持つようになり、元気のなくなったアパレルはリストラでいい商品が作れなくなっています。結局、国内外の小さくてもイキのいいメーカーから、好きな物を好きなだけ仕入れるのが最もリスクのないやり方だという時代になったようです。

私は決してブランドというもの自体を否定はしません。商品を選ぶ判断材料としてブランドは最も重要な手掛かりのひとつです。ただ「似て非なる」あるいは「ありえっこない」ライセンス商品は、もういい加減にしようよ、と思うのです。

最後に今度はクイズです。以下のデザイナーの性別と存命か否かを答えて下さい。①クリスチャン・デイオール、②イブ・サンローラン、③ニナ・リッチ、④ミラ・ショーン。

 

※解答…①男性、死亡。②男性、存命。③女性、死亡。④女性、存命。