倶樂部余話【一七二】店とハガキとインターネット(二〇〇三年四月一〇日)


当店のホームページ(HP)を介しての店舗以外での売り上げ、いわゆるネット通販が順調で、今のペースで行くと年間で一千万円に届きそうな勢いです。特に昨秋から本格化したアランセーターのネット販売が大きく貢献していますが、正直言って、ここまで売り上げが伸びるとは、予想していませんでした。

二〇世紀には電子計算機と和訳されたコンピュータですが、今そう考える人は皆無でしょう。いったいどこの誰がコンピュータと電話線をつなぐことを思いついたのかは知りませんが、今や、電話やファックスよりも便利な通信手段として、日常欠くことのできない道具になっています。もし、現代にインターネットがなかったら、と考えると、そら恐ろしい気になってきますから、世の中も、そして私も、ずいぶん変わったものです。

素人仕事のHP開設から約二年半、アクセスカウンターは五万件を越えました。驚くばかりです。会ったこともなくご来店すらない多くの人たちが、当店のことをやけに詳しく知っていたりするのは、なんだか不思議な感覚です。日本の各地から少なからぬ時間と交通費を使って「HPを見ていたら、どうしても行ってみたくなりました」と、大した観光名所もない東海道のこんな地方都市まで、出張や帰省のついでというならともかく、わざわざうちの店に寄るためだけに、一日がかりでお越しいただける方も、週末にはちらほら見受けられるようになり、実にうれしく感じます。三月のある土曜日などは、売上の七割が県外からの方のお買い物だったほどです。また、常連客の皆さんも、HPで新着情報をしっかり予習してからご来店になったり、と、三年前には考え及ばないほどに状況は様変わりしました。初めての仕入先に新規取引をお願いするときは、ふつう店舗の写真や扱いメーカーリストなどを伝えなければなりませんが、そんな場合にもHPはとても役立ちます。

でも喜んでばかりもいられません。なぜなら、うちのサイトをまめにチェックされてる人は、きっとよそのお店のHPも同じようにいろいろご覧になっているに違いないからで、全国から問い合わせがあるということは、見えないところでそれだけ日本中のお店と競っているわけで、決して静岡だけのお山の大将という状況は許されないからです。「せっかくここまで来てみたのに、期待したほどじゃなくて、がっかり…」と思われないように、ますます店づくりに磨きをかけていかねば、と肝に銘じています。

店舗、ハガキのメンバーズ通信、ホームページ、どれが欠けてもこの店はこの店ではなくなります。今や、この三位一体こそが、セヴィルロウ倶樂部なんだろうな、と感じています。