【倶樂部余話】 No.234  服屋から靴を考えてみると… (2008.7.1)


  服屋の目で靴を見るといろんなことに思い当たります。
 もし服の寸法が五ミリ狂っていても、気付く人はほとんどいないでしょうし、このぐらいは仕方ないよ、の許容差の範囲で済まされますが、同じ五ミリもこれが靴となると、表記がワンサイズ変わるほどの大きな違いとなります。
 しかも、靴というのはひとつ作ればいいというものではなく、必ず左右二つを全く同じに作らなければなりません。寸法が違っても革の模様が違っても少しの差も許されないのですから、当たり前のようですが、これはすごいことだと思うのです。
 反面、不思議に思うのは、服屋にとってメジャー(巻き尺)は必携の道具でこれがないと仕事になりませんが、靴屋さんに行って足の寸法を測られることはまず稀で、靴のサイズというのはほとんど客の自己申告で決まってしまうもののように思えます。
 服屋の私が言うのも何ですが、誂え(=オーダー)に適しているのは服よりもむしろ靴の方じゃないかと感じることがよくあります。寸法の個人差は服の比ではなく、どんなに素晴らしい品もサイズが合わないとその真価が発揮できない、という点も服以上でしょう。ただ、靴のオーダーの場合、服よりもその完成図が想像しにくい、という弱点は否めず、それが初めてオーダーをやってみようという方の気持ちのハードルを少し高くしているのではないかと思います。
 「かっこいい靴を履くには、我慢は付きもの。痛い思いも仕方ない。」と思っている方は多いようで、春からレディスを始めてからは、特に女性にそれを強く感じます。確かにブランドのある高価な靴、それは絶対にいい靴です、否定しません。が、自分の足にストレスなく履けるかっこいい靴、これも併存するものとして、また絶対に必要な靴なのだと思います。
 もうひとつ、今後はエコという観点から見ても、履き潰すのではなく、リペア(=修理)して履き続けられる、という利点が誂え靴にはあることも見逃せない要素となることでしょう。
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