【倶樂部余話】 No.239 困った円高 (2008.12.1)


 高校生の娘が珍しいことに(!)私に聞きます。「ねぇ、円高っていいことなんだとばかり思ってた。だって私が小さい頃にお父さんがよく『やった、円高、円高!』って喜んでたじゃない。でも最近のニュースだと円高はよくないことのように言ってるみたいだし…。」
 確かに十二年振りに訪れた空前絶後の円高です。もちろん我々には円安よりも円高にこしたことはないのですが、しかし今回はそうそう喜んでもいられない「困った円高」なのであります。
 そもそもこの円高ユーロ安、九月中旬以降の世界金融不況の副産物みたいなもので、あまりにも急転直下でした。しかも時期が悪すぎます。秋冬物の仕入れが大半済んだ後での円高ですから、今店内にある輸入品のほとんどは高いユーロで仕入れたものです。でも「コレ来年はきっと安くなるよね」と問われれば、もうこれは否定できません。将来に向けて価格が下がる、つまりデフレ状態ですから、当然買い控えになります。
 ところが店側も、来年安く売るためには、高く仕入れた今の在庫を無くさないと次の仕入れができません。かくして、円高メリットを享受しているわけではないのに、販売価格は値下げを余儀なくされる、という構図になるのです。表向きは「円高差益還元」と称して値下げを実施する海外ブランドも、実は円高差益なんてほとんどないのではないか、と想像が付きます。
 でも、お客様にとっては、何も不都合はなく、むしろありがたい話でしょう。売る側の価格設定が弱気にならざるを得ない今シーズンですから、お買いになる側はどうぞ強気に、丁々発止の値踏み交渉なんぞを楽しまれてはいかがでしょうか。(弥)