【倶樂部余話】 No.282 トラウザーズというのが英国流です (2012.04.26)


 トラウザーズ、スラックス、ズボン、パンツ、バンタローネ、ボトムス、いろんな呼び方がありますが、総じて上着に比べると日陰者です。
 テレビを観ていても上着はいろんな人を参考にできますが、腰やお尻や足元はなかなか映らないので、トラウザーズの正しい履き方とは何なのかさえ人さまざまです。試着される皆さんの腰の位置も実にまちまちですね。また、上着は着心地と見栄えはほぼ一致しますが、下の方は履きやすいけど見てくれが悪い、あるいは反対に、見た目は良いけど履きづらい、というケースが往々にしてあります。
 上着は八つの布で構成されているのに対し、ズボンを形作るのは主に四つの布です。それでいて腕よりも複雑で激しい脚の動きに対応しなければならないのですから、作る方は苦心します。ここで大切になるのが「くせ取り」という作業。もともとフラットな生地にアイロンでゆがんだクセを付けてお尻やひざの丸みに対応させていくのです。トラウザーズを二つ折りにハンガー掛けしようとするとなぜだかうまく掛けられない、という経験があると思いますが、これはくせ取りが効いているからです。私は「くせ付け」といった方が分かりやすいと思うのですが、なぜか古くから「くせ取り」といいます。自然なくせ付けが出来の善し悪しを決める秘訣だと言えます。
 今月は久々のトラウザーズ特集。脇役ですが名優揃いです。(弥)