【倶樂部余話】 No.289 遠いのに近い、近いのに遠い (2012.12.01)


 11月になるともう次の冬への仕掛けが始まります。
 11/13、恵比寿の某ホテル。英国で六世代三百年の歴史を誇る老舗のネクタイ生地ファクトリーから担当者が来日中で、仲介者を交えて別注タイの打ち合わせ。初対面で大いに緊張しましたが、驚いたのは、申し訳ないくらい少ない本数なのにこちらの希望どおりの配色で注文を受けてくれる柔軟さでした。しかもサンプル織りはたった二週間で作って日本に送ってくる、という驚異的スピード。英国と静岡との距離感を感じることもなく、三百年生き残りの秘訣ここにあり、という気がしました。
 翌週11/20は静岡県磐田市福田(ふくで)地区へ初めてのドライブ。コーデュロイでは国内シェア90%超という一大産地ですが、近年は安価な中国製に押され生産量は減少の一途です。地産地消を振りかざすまでもなく、せっかく地元にいい素材があるのならばこれは是非とも活用してみたい、と思い、新装開店なった織物組合のショップを訪ねました。運良く意欲的な織布ファクトリーの若社長と会うことができ、「高品質な定番のコーデュロイを見本帳を元に少量ずつ適時に仕入れるシステムはないのだろうか」と相談しましたが、なかなか糸口が掴めません。コーデュロイという布は我々の想像以上に作る単位が大きいらしくて、普段何十反の話をしている彼にメーター単位の相談では、どうも「のれんに腕押し」みたいな感触で、小口でエンドユーザーに提案できるような窓口さえ見当たりません。実現までの道のりはまだまだ長いな、と感じました。