【倶樂部余話】 No.298 うなぎの気持ち (2013.07.22)


 きっかけは近所のうなぎ屋の貼り紙でした。「品薄のため土用丑の日は休業します」 えっ土用丑の日って、そもそも夏に客足の落ちるうなぎ屋の販売促進のために平賀源内が考えた江戸時代のアイデアじゃないの?大晦日のそば屋のごとく、そこはうなぎ屋の晴れ舞台の日のはず。なのに休業って、本末転倒じゃないか。なんだか気の毒というか皮肉なものだと思えてきたのです。
 気になって検索したら、丑の日に休むうなぎ屋は結構あって、それぞれいろんな理由を宣っていますが、要は、まっとうな商売にならないからということのようです。周知の通り、うなぎの不漁は深刻です。何しろ絶滅危惧種ですよ。実はそのすべての元凶が「土用丑の日」作戦が成功しすぎたことにあります。スーパーから牛丼チェーン、回転寿司までも参入して、七月下旬に照準を向け、世界中のうなぎをかき集めて廉価販売の競い合い、飽くことなき商業主義のなれの果て、がこの結果なのです。さて、私たちは一体どうしたらいいのでしょうか。
 平賀源内によって作為的に仕掛けられた需要のピークなのだから、再度作為的に変えてしまえばいい。どんなに宣伝されても夏に安いうなぎを食べないようにします。うなぎはハレの日の特別な食べ物として再認識し、本来の旬である秋冬の季節に、ちゃんとうなぎ専門店で小一時間待って何千円払って食するようにしましょう。誰かが平成の源内になって、セブンアイとイオンと吉野家に夏のうなぎの安売りを止めさせる。そうすりゃ日本中右へ倣えします。そして先駆けたところほど消費者の支持を得られるはずです。暴論でしょうか。でも流通業が引き起こした事態なのだから、流通業はその解決の一助にならなければいけないと思うのです。(弥)

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