【倶樂部余話】 No.302 隣の芝生は消えモノの世界  (2013.11.28)


 食品や洗剤のように、食べたり使ったりしてじきに消えてなくなるモノを消えモノといいます。我々のような消えないモノの店から見ると消えモノの世界は隣の芝生のように思えることがあります。
 近ごろかまびすしいのが食材の虚偽表示の問題。あまりに悪質な誤魔化しや開き直りは糾弾されるべきですが、中には、何もそこまで、と思える過剰反応もあるように感じます。イセエビが外国産でも構わないし、今時ひとつでも手作業があればてづくりシールが貼られてもいいんじゃないかと。そもそも消えモノの世界はあいまいな表現が得意技で、認識違いを誘引しがちです。鯛じゃないのに金目鯛や甘鯛、日本生まれでない国産鰻や国産牛、ビールと違う第三のビール、ケチを付けたらキリがない。でもこれが日本の食文化の良き伝統なんじゃないかと思うのです。でなけりゃがんもどきやカニ蒲鉾なんか生まれなかったでしょう。ある程度仕方ないよ、と大らかなのはこれが消えモノだからだろうと思います。
 さて、消えモノを羨ましく思うもうひとつのことが今じわじわと進行しています。それは、量を減らして価格を押さえる、という、消えモノならではの値上げの手法。四月の消費増税へ向けての対策であることは言うまでもありません。こちとら、服のサイズを3%小さくするとか、できっこないですから、増税分は価格に転嫁するしかないわけです。今のうちから量減らしをしておいたうえで、増税後も価格を据え置きます、という宣伝をするところがきっと現れるだろうな。ああ、羨ましい、って、やっぱり隣の芝生は青く見えるんでしょうかね。(弥)