【倶樂部余話】 No.312 スコットランド独立の住民投票に思う(2014.10.1)


 セーターの産地として名高いスコットランドのホーウィック。あるファクトリーの販売担当をしているアーサーにアイルランド・ダブリンの展示会で出会ったのはこの一月。タータンキルトの伝統衣装に身を包んだバリバリ生粋のスコッツマンに映りました。私とは初めての取引となった商談も無事に進み、雑談になりました。

私「ホーウィックは僕も訪れたことがある。ハギスのうまい美しい田舎町だよね。かつてはたくさんあったセーターのファクトリーも今は廃業したり買収されたりで、いろいろと大変らしいね」
アーサー「今のうちのファクトリーのオーナーはインド系の人なんだが、そういった外資のおかげでスコットランドのセーターが続けられるんだから、ありがたいことなんだよ」
私「そうなんだ。おや、君のところのラベルはMade in Great Britainかい…。スコットランド人なら誇らしげにMade in Scotlandって謳いたいもんじゃないのか?」
ア「だって分りやすいほうがいいだろ」
私「しかしスコットランドは独立したいって言ってるんだろ。確か秋には住民投票があるって聞いてるけど…」
ア「ああ、だけど誰も本気で独立できるなんて思っちゃいないよ」
私「でもそのいでたちの君だから、当然君は独立にyesなんだよね?」
ア「いや僕はnoだ。今更独立したってメリットはないよ」
私「へぇ、ちょっと意外だな」
ア「(自分の胸と頭を交互に指して)此の地アイルランドの人は心が熱いと頭まで熱くなっちまうだろ。でも、同じケルト人でもスコットランドの人間は心は熱くても頭は冷静なんだよ。300年前からずっとそうなんだ」

 さて、投票の様子は知ってのとおり。僅差でnoが上回ったという結果は、恐らくスコットランドにとって、この上ない最高の大勝利をもたらしました。UK(連合王国=英国政府)も、かなりの譲歩を余儀なくされましたが、何とか顔をつぶされずに済みました。仮にもしyesが勝ってしまっていたら、今度は逆にスコットランドがUKにペコペコ頭を下げなければいけない事態になっていたでしょう。それから今回の結果は将来必ずやってくる北アイルランドがUKから離脱するのか帰属するのかの決断への道のりを確実に一歩進めました。
 さすがブレーブハートなスコットランド、あっぱれです。今度アーサーに会ったら極上のスコッチで祝杯を挙げてやりましょう。(弥)  
Yowa312