【倶樂部余話】 No.323  迷彩柄をどう思いますか (2015.8.30)


 某総合衣料品店がナチスのカギ十字の付いた服を販売停止にしました。この処置の是非は判断の分かれるところですが、もしその発端がこれを仕入れたバイヤーの無知だとしたら、それはバイヤー失格と言わざるを得ません。
 例えば、いくら縞模様が流行になっているときでも、白黒の太い縦じまの上下服が決して市場に現れることはありません。ユダヤ人に着せた囚人服を連想させるからで、かつて日本人デザイナーがこれをパリコレで提案して総スカンを食らったという逸話があります。横はいいけど縦は絶対にダメなんです。
 そうはいっても戦争物がすべてダメと決めつけてしまうこともできません。トレンチコートやPコートをそのルーツが軍服だからという理由で遠ざける人はいないでしょう。むしろ軍服ほど服を作るうえで欠かせない重要なアイデアソースになっているものはありません。
 忌み嫌うものは国や人種によって異なるので一概に決めつけることができません。先日読んだ新聞には、今の日本でいたるところで見受けられる迷彩柄(カモフラージュ)が、米国においては銃の好きな人とか奇妙な愛国心にとりつかれている人の象徴と捉えられかねない雰囲気がある、と書いてありました。いや日本でも迷彩服に眉をひそめる人は意外に多いのではないでしょうか。
 かつて東京のある大規模な総合展示会で、エノラ・ゲイというブランドの服を見たことがあります。原爆礼賛とも判断されそうなこのブランド名に怒りを覚えたものでした。さすがにもうこの服は消えたみたいですが、検索してみたらエノラ・ゲイという会社が英国にあり、煙幕弾や迷彩服を売っています。きっと英国ではそれほど知られていない一戦闘機の名なのかもしれませんね。
 やるやらないの判断はそれぞれが主体的に決めればいい。ただ、それを仕入れるバイヤーは絶対に無知ではいけない。バイヤーにはそういう責任があると思うのです。(弥)