倶樂部余話【四十六】あきないでみせる(一九九二年十一月十七日)


小話三題。

①発売中の雑誌「メンズクラブ」十二月号に当店のアランセーターが掲載されています。

十月初めにアイルランド政府商務庁の東京オフィスから「ある雑誌社が本物のアランセーターに惚れ込んで販売しているお店を探しているのですが、東京周辺では全く見当たらないので、御店をご紹介したいのですが…」という電話が入り、記者が静岡まで取材に来て実現した記事です。私が言うのも何ですが、二頁弱の中で、上っ面の紹介ではなく、かなり濃い内容でまとまっていますので、書店でお求めいただければ幸いです。

たかだかメンクラですが)静岡発の当店の情報が全国区に通用したという事実は、お客様にも誇りに感じていただけることではないかと思います。

②同じアイルランドでも今度はちょっと悲しい話です。

開店当初から皆様にお勧めし続け「使ってみて驚いた。こりゃ世界一だよ!」と絶賛をいただいているアイリッシュリネンのハンカチですが、その中でも一番人気のストライプ柄のものが、今ある在庫分だけで今後は生産ができないということが分かりました。問屋にあった残りの在庫を多めに仕入れてはおきましたが、ファンの方には早めのまとめ買いをお勧めいたします。

またひとつ「幻の逸品」が増えてしまい、大変残念な思いです。

③よく「商い」は「飽きない」ことだと言われます。また「店」は「見世」とも言い、「見せる」→「魅せる」に通じます。しからば「商店」とは「飽きずに見せる、飽かせず魅せる」場所ということになりましょう。

店の「売り場」は品物を漫然と陳列した「並べ場」ではなく「見世場」でなければお客様の感動は得られないでしょうし、店の力とは、見世の力つまり魅力そのものだと言えるのではないでしょうか。

そんなことを最近もやもやと考えていますが、ともかくも、この「商=飽きない」と「店=見世」の二つの漢字、近頃ますます好きになってきた言葉なのです。