倶樂部余話【五〇】手前味噌、うれし涙の五〇号(一九九三年四月六日)


記念すべき第五十号は、これまた記念すべき創業二十周年キャンペーンのご案内です。

さて、商売にどうしても必要なものとは一体なんでしょう。店舗でしょうか。いいえ、店を持たない通販という業態だってあります。では商品ですか。いや現物がなくてもカタログだけでモノは売れます。販売員ですか。いえ、自動販売機は下手な人間よりも実によくモノを売ります。

店、モノ、ヒト、それよりもまず必要なもの、それがお客様ではないでしょうか。客がいなくては商売は絶対に始まらないのですから。買い手がいなければ売り手は商売ができません。当たり前のようですが、実はとても大切なことではないかと思うのです。

この二十年間、本体の野澤屋の創業から数えると実に七十年の期間、小規模ながらも曲がりなりにも静岡市の中心街で店を張り続けていられるのも、お客様がいて下さったから、という理由意外には何もありません。この感謝の念をどうやってお客様に還元するか、思案の末に別紙のような謝恩キャンペーンの実施にたどり着いたわけです。

私どもの企画に「ならば…」と一肌脱いで下さった二十社の方々に総数約一万通のご案内を発送すべく準備を進めていますが、お読みいただければ、これを契機に、皆様のように末長いお付き合いができる素晴らしいお客様がもっともっと増えてくれれば、との私たちの願いが込められていることはご理解いただけることと思います。

しかし、私たちの一番大切な財産は当店を愛し続けていただいているファン客の皆様であることは言うまでもないことです。「おいしい話はまずお得意様から」が当店の大原則ですので、今回につきましても、皆様には各企業へのご案内よりも一週間早く実施させていただくこととしました。

消費の停滞している昨今ですが、当社の成人式に「おめでとう」の気持ちをお寄せいただけるのであれば、どうか二十年に一度のこのお祭りにご参加下さいますよう、心よりお願い申し上げます。

 

※会社の創業二十周年にかこつけて、地元企業二十社の社員さん向けに、二十日間の二十%オフ、というイベントを企画した。今読んでみると、何だかとても言い訳がましい書き方で、要はバブル崩壊で売上が低迷し、とにかく売上を上げなければいけない、という、もがき苦しんでいた様子が分かる。

 

デフレへ向かっている頃なので、いかにかっこよくデフレに対応するか、を模索している姿が浮かぶ。