倶樂部余話【七十六】フライディ・ウェア(一九九五年一〇月二五日)


松江~山口・アイルランドフェアの長期ロードのため不在しまして、皆様には不便をお掛けし、あらためてお詫び申し上げます。と言いつつ、日常業務から開放されての二週間は、私自身ちょっとしたリフレッシュになったのも事実です。いい体験をさせていただきました。

ところで、今年の「いつまでも涼しくならない秋」を早くから予言していた方がおります。その根拠は「旧暦」。何でも今年は「うるう月」があり、八月が二回あるのだそうで、その分夏が長くなるという説明でした。しかしその「うるう八月」も一〇月二三日に終わり、いよいよ旧暦九月に入ったので、ここから急速に寒くなるだろう、とのことでした。ホッとひと安心しています。

さて近頃かまびすしいのが「フライディ・ウェア」。卒寿の老御大・石津謙介先生までがテレビCMに担ぎ出され、いささか業界も浮かれ過ぎかと思うほどの話題です。特別目新しいモノが出てきたわけではないのですが、大企業や官公庁までもが採用するに至って、今までのドレスコード(服装規定)の枠が徐々に打ち破られつつあることは好ましいことと思います。とりあえず、ブレザー&チノパンツのスタイルはフライディ定番のようですし、カジュアルな要素をオンウェアに取り込む着方がプラスの評価に働くのですから、お洒落を楽しむ意欲のある人にとっては嬉しいことです。

私が最も期待しているのは、レディスでは当たり前の、コーディネート感覚や着回し感覚が、これでようやくメンズの世界にも定着してくれるかな、ということです。これまで単品志向が強すぎたメンズウェアの復権の鍵はここにあると思っています。

着回しは倹約につながります。となれば範はやはり英国に有り。英国服の注目にはそんな理由もあるのではないでしょうか。(こじつけかな…)