倶樂部余話【七十八】クリスマスの秘密(一九九五年一二月二四日)


こんなに嬉しい秘密を私だけのものにしておくのはもったいないので、お話ししてしまいます。

先日、以前からときどき顔を見せてくれる証券マンのY君が来店し、生涯の伴侶と心密かに決意しているY子さんへのクリスマスギフトを悩んでいました。しばしの思案の末、赤いケープに決め、「驚くだろうな」と喜々として帰っていきました。

その翌日、今度はY子さんがやってきました。彼女は前日のY君の行動を知りません。しかもY子さんもまた、プレゼントのことは彼には絶対に内緒にしておいて、と言います。Y君の好みとサイズは私がよく知っていますので、ドレスシャツとタイとベルトをひと箱にまとめました。ふたつの純情なハートに私も最大限の計らいをと思い、タイの色は前日のケープに合わせて赤に決めました。もちろんその理由は彼女には言えませんでしたが。

クリスマスイブの夜、私がお手伝いした二つのギフトが、彼らの愛の進展に寄与できることを祈るばかりです。メリー・クリスマス!