【倶樂部余話】 No.255  ラジオ体操のススメ(2010.3.1)


 昔は、年寄りのやることだ、と鼻で笑っていた、ラジオ体操と犬の散歩。これを毎朝続けてそろそろ半年が経ちます。ラジオ体操の、第一はしっかり体の中に染みついていたのですが、第二は当初まるでさっぱりだったので、YouTubeで何度も繰り返してようやく身に付けました。第一第二と続けて真剣にやるとちょっとしたエクササイズになります。
 毎朝同じ時刻に同じコースを歩くので同じ人と挨拶をします。でも風景は季節ごと少しずつ微妙に表情を変えます。公園の広場は曜日によってソフトボールやサッカーなど朝早くからメンバーが集まってきてます。空を見上げると羽田からの一番機が朝日を浴びて西へと向かう姿が見えます。静岡上空のこのあたりは空の銀座通りらしくて、幾筋もの飛行機雲が同時に描かれる朝もあります。
 「どうせ三日坊主でしょ」と高をくくっていた家人でしたが、どんな雨の日もお正月も、一日たりとも途切れることなく続いているので、「よく毎朝その気になるわねぇ。」と漏らします。犬がせかすから、ということもありますが、それだけではありません。「うん、確かにやる気がなけりゃ体は起きないわけだけど、逆の場合があるってことに気が付いた。起きたくない朝でもともかくまず先に体を動かす。心が体を動かすんじゃなくて、体を動かして心を起こすってこともあるんだね。」毎朝体操や散歩などを続けている人は、きっと誰でも同じことを感じているのではないか、と思うのです。
 ラジオ体操80年、これはもう立派なニッポンの伝統です。(弥)

【倶樂部余話】 No.254  「引っ越し通知」の届く店(2010.2.1)


 あなたの家にはひと月にどのくらいのダイレクトメール(DM)が届くでしょうか。封も開けずにゴミ箱行き、というものもあれば、もしかしたら一生を左右するような大きな出会いになるものまで、きっと様々でしょう。その中で、もしあなたが転居したとして、こちらから新住所を知らせておきたいな、と思える先がいくつあるでしょうか。あるいは、お店などから来た商的な年賀状に対して返信を出したことがあるでしょうか。残念ながら私の家に届くDMには一つも思い当たる先がありません。
 ところが、です。当店には「引っ越しました」というお客様からのお知らせが頻繁に届くのです。また正月には多くのお客様から年賀状を頂戴します。これらのことは結構自慢できることなんじゃないか、と感じています。
 言うまでもないことですが、お客様には転居通知や年賀状を私たちに出さねばいけない義理も義務も責任も、何もありません。なのにどうして…。自惚れて言うなら、きっとこの静岡の小さな店を、そして毎月発信する黒い小さな文字ばかりが並んだこの官製ハガキを、「顔の見える店、私のハガキ」として大事にしてくれているからなのでしょう。
 お客様から貰うもの、それは商品代金だけではありません。催促しているわけではありませんが、でも、転居通知や年賀状、店であるがゆえに、実は本当に嬉しくてたまらないものなのです。(弥)  

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【倶樂部余話】 No.253  野澤屋創業88周年(2010.1.8)


 新年おめでとうございます。元日の静岡は、寒風が強く吹き荒れましたが空は快晴で、今年は風にめげずに晴れやかであれ、と何だか天気に励まされているような思いがしました。
 年頭はいろんなところで今年はこうなるという予想が書かれていますので、私もここで誰もまだ言ってくれない予測を一つ述べたいと思います。それは「トラディショナル」の復権であります。トラディショナル、トラディション、略してトラッド、一般には伝統と訳されています。またファッション業界では’70年代に流行したある分野の商品ジャンルを指すこともあります。
 もしトラッドが時代のキーワードとして復活したとすると、きっとまた様々に曖昧な解釈が生まれるでしょうが、私が考えるトラッドの意味は、と例えるならそれは「轍(わだち)」なのです。轍(てつ)を踏む、と言うとあまりいい意味ではありませんが、しかし多くの先人たちが付けてきた轍をなぞらえる姿勢を持つこと、そういう態度で臨むこと、これがトラディショナルと言うことなのだと考えます。決してタータンチェックやボタンダウンシャツを着ることがトラッドなのだとは思わないで欲しいのです。

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このところあちこちで創業○○周年とか生誕○○年というイベントがとても多いとは思いませんか。これはとてもトラッドな現
象のひとつだといえます。そして、かくいう当社も、今年は創業88周年を迎えます。大正11年(1922年)に祖父が静岡・呉服町の横丁、玄南通りでわず
か二坪の「野澤屋」を始めて88年になります。ですので、今年一年間は88や8にちなんだ商品や企画を次々に提案していこうと考えております。お楽しみいただけましたら幸いです。
今年もお引立てのほどをよろしくお願い申し上げます。(弥)

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上のマークはスコットランド・グラスゴーのとあるストリート88番地にあるレストラン"Two Fat Ladies"のロゴです。とても美味でもてなしも素晴らしくいい思い出の残っている店なので、当社88周年キャンペーンのシンボルマークとして使いたいと拝借をいたしました。