倶樂部余話【329】イースター・ライジング(2016年3月1日)


 イースターは、キリスト教にとってはクリスマスよりも大切な最重要行事ですが、日本ではハロウィンやバレンタインディに比べても今一つなじみが薄いものです。「春分の後の満月の次の日曜日」と日付が一定しないのが大きな理由でしょう。昨年が4/5、今年3/27、来年は4/16ですから、これでは商業イベントには使えませんね。
 よく知られるように、イェスが十字架に掛けられた三日後に復活(rising)を遂げたのを祝う祭事がイースター(復活祭)ですが、この一月に訪れたアイルランドの首都ダブリンでは、今年のイースターは特別だよ、と大いに盛り上がっていたのです。1916年のイースターの日に起きたイースター・ライジング(復活祭蜂起)。長く英国の植民地であったアイルランドが独立に立ち上がった首都でのクーデターで、歴史的英雄も数多く傑出し、その後延々と続く独立運動の発端となった重大事件です。risingは復活と蜂起の二重の意味を持っていたのですね。今年はその百周年に当たり、聖パトリックの日(3/17)にも近いので、数々の記念行事が企画されているのでした。
 こうして今年アイルランドの人々は英国憎しの気持ちを新たにするのでしょう。その英国、奇しくも今年EU離脱を巡っての国民投票に揺れています。欧州の中での英国の歴史は対立と協調の繰り返しで、実に興味深いです。
そんなことで、今年はいつもと少し違う気持ちでイースターを迎えてみようと思っているのです。(弥)

倶樂部余話【328】店に一番必要なものとは(2016年2月6日)


 4日間店を空けてのダブリン行でしたが、計算してみたら52時間現地に滞在するために往復に掛かった時間が50時間でした。かろうじて目的が手段を上回りましたが、それでもしっかり時差ボケになるのはむしろ健康な証拠なんでしょうか。
 しかし慌ただしい1月でした。店名変更、模様替え、展開ブランドの休止、スタッフの退職、と普段と違う怒涛の睦月。そんな中で以前にも考えたこんなことを思い出していました。店にとって一番欠かせないものは何だろうか、と。
 店舗でしょうか ? いえ、無店舗販売や通販もあります。人か? いや、無人販売や自動販売機だってあります。金?、あればいいけどなくても借りれば何とかなる。商品は? オーダーなどの受注生産なら在庫なしでも売れます。人もモノも金も場所も、実は最も必要なものではないのです。
 それでは、一番欠かせないものとは? お分かりでしょうか、はい、それは客です。店というのはお客様がいないと成り立たないのです。新しい店の様子を心配してきてくれる方、辞める店員を労うだけのために来てくれる方、そんなお客様が次々に来店される様子に、ああ店というのはホントはお客様が作っているものなんだ、とつくづく思った一月なのでした。
 そんなこんなで二月の通信が遅れました。すいません。(弥)

【倶樂部余話】 No.327  あらためてジャックノザワヤです (2016.1.1)


 本日より「セヴィルロウ倶樂部」改め「ジャックノザワヤ」を襲名いたします。そう、前号でのお知らせ以来、皆様から多くの問い合わせやご意見をいただきましたが、この店名変更は「襲名」という表現が一番近いように思います。(ちょっとおこがましいのですが)こぶ平から正蔵へ、みたいなもので、だから、ずっとこぶ平ちゃんのままでいて欲しかった、という人がいるかと思えば、懐かしい名跡を継ぐ新しい正蔵に期待してみたい、という方もいらっしゃるはずです。
 店のマークは野澤屋の創業者・祖父野沢弥輔が60年前に作ったデザインを復活させ、英文ロゴは19世紀末にスコットランドで活躍したデザイナー、チャールズ・レニー・マッキントッシュ考案のフォントを採用しました。どちらも不思議に古さを感じなかったのです。
 商品については追々説明するとして、他に変わったところといえば、まず今日からは新しい店内レイアウトです。きっと、その手があったか、と驚かれることでしょう。音も変えました。よりリラックスできる音楽にします。それから香りも。この場所特有の漢方薬の匂いにうまくかぶさる香りをようやく見つけました。もう一つ大切な変更としては営業時間の短縮があります。閉店時間の繰り上げ、火曜水曜の連休など、一つしかない私の体を有効活用するための術ですのでどうかご理解下さい。
 逆に言うと、それ以外は変わりません。セヴィルロウ倶樂部の名はオリジナルブランドとして残しますし、英国旗もこの倶楽部余話もそのままです。何よりお客様と店の器は何も変わらないのです。
 そんなゆるい感覚で気負わずおごらず、開店29年目にしての新屋号「ジャックノザワヤ」、仕切り直して新たな船出です。倍旧のお引立てをどうぞよろしくお願いいたします。(弥)