倶樂部余話【341】季節感を否定してみるという発想は?(2017年3月1日)


 石頭にならないためにたまには常識を見直してみることも大切です。
例えば季節感。この商売ではことのほか季節感を強調することが肝要と言われます。この季節にはこれを着ましょう、という提案ですね。ところが売場で演出する季節感と実生活で感じる季節感にはズレがあるなぁ、と日頃から感じるのです。大ざっばに言うと、すなわち、春は思ったよりも寒い、夏は思いのほか暑い、秋もまだまだ暑い、冬はなかなか暖かい、と常にずれている様な感覚があります。「この季節にはこれ、って売る側はそう言うけどさ、そう言われても実際の気候がこれじゃあね、……」というセリフを一年中顧客から聞いているような気がするのです。

 ならば逆に、季節感を否定してみる、という発想もアリなのかもしれません。季節感の演出は最低限にとどめ、反対に、春秋だけでなく、夏も冬も一年中使えますよ、という品揃えを強調してみる、という店があってもいいのかなぁ、と漠然と考えました。それで売場がつまらなくなってしまったら意味はないですが、その発想でも楽しい売り場が作れて、売り上げが取れればそれを肯定されることもあり得るだろうと。

 いつも三月は売場づくりに腐心するのですが、この発想が反感を買うのか、共感をもらえるのか、不安の中で今年は店を作ってみようと思うのです。(弥)

倶樂部余話【340】年下の男の子が止まらない(2017年2月1日)


 困りました。毎年この時期の当話は海外出張報告の類なのですが、わざわざ書くような面白いネタが見つかりません。起きたトラブルと言えばブルーモスクで右の手袋を落としたことぐらいで、あまりにすべてが順調すぎて、最後に荷物が出てこない、なんて言う大どんでん返しがあるんじゃないかと怖くなったくらいです。
ブルーモスク
行きの長すぎる乗り継ぎ時間を利用して早朝のイスタンブールの街を散策。ホントにここはいい街ですよ。でも戒厳令の出ている国、テロに遭ったらそれまで。さすがに今回だけは補償無制限の旅行保険を掛けました。街は思ったほどの物々しい警戒もなく、逆にこのユルさじゃいつどこでテロが起きても不思議はないですね。
Ballsbridge
2泊3日のダブリンはほとんど展示会場に缶詰め。一晩だけお気に入りのパブで生演奏を聴けたのがせめてもの息抜きでした。アイルランドの一番の敵対相手は英国、そして最大の仲良しは米国。なので、会う人会う人話す中身は、ブレクジットとトランプ・ショック、こればっかり。さながらこの二つの事柄のアンケート調査に日本からやってきたという感覚でした。

 いつものようにニコラス・モスのサンプルを割らないように慎重に抱えて帰国したのですが、ブルーモスク以来「年下の男の子」がずっと頭の中で止まらない。片方なくした手袋…。(弥)