ヨーツェン工場探訪記

2005年一月、厳寒のフィンランド、ヘルシンキ郊外のリーヒマーキにあるヨーツェンを訪ねました。

せっかくマイナス20℃の中、工場まで行ってきたのですから、ちょっと工場見学レポートもいたしましょう。
ダウンのコートや布団、寝袋の製造現場ということで、もしかしたら、羽根くずの舞い上がる中でマスクをして作っているのかもしれない、と思っていましたが、とんでもない、いたってクリーンで、むしろ一般の洋服製造の現場よりも埃くずが少ないように思いました。

というのも、工場内のダウンの移動はほとんどがパイプの中を通って空気の力で運ばれるからで、ふわふわ舞い上がってしまうことはほとんどないからなのです。
ヨーツェンはもともとダウンの洗浄の仕事から創業したところで、その洗浄工程は「ヨーツェン・ダウン・システム」という名で特許を取っているご自慢のシステムなのです。


シベリアから届いた泥汚れの付いたべたべたのガチョウの毛を、洗浄と乾燥を繰り返して、無菌でふわふわのダウンボールにするまでの工程に、かかる人員はたった一人、ほとんど機械化されていました。
各工程間を結ぶパイプの中を白いダウンがスボスポ通っていきます。

(←原毛の最初の洗浄が終わったところ)

楽しく見入ってしまったのは、最後にダウンの等級を選別するところ。
フルイにでも掛けるのかと思っていたのですが、そうじゃないんです。
大きなサウナ部屋のような密閉した箱の中に向けて、上端から熱して乾燥させたダウンを思いっきり吹き込んで、遠くへ飛ばしていくのです。
重たいフェザー(芯のある羽根)はすぐに近くに落ちますが、軽いダウンは舞い上がりながら遠くまで飛んでいきます。

そして一番遠くまで飛んだダウンが一番いい等級になるということなのです。
こうしてダウンは5つぐらいの等級に選別されるというわけです。

(→箱の一番手前の部分。下から白い羽根がもくもくと上に吹き上げられていく。そして一番上の隙間から箱全体に放出されます)
大きな箱の中に吹き上がったダウンがゆっくりゆっくりと落ちていく光景は粉雪が降りしきるようで、それはそれは美しく、飽きずにずっと眺めていました。

(←降り積もっていくダウンボール)

(↓人の背丈ほどあるこの一袋が約10kgです)

それから、コッカサーリ社長から聞いた話ですが、例えば同じ「アークティック」のダウンジャケットでも、日本へ輸出するものとフィンランド国内で売られるものとでは、中身のダウンは違っている、というのです。
「品質に厳しい日本向けのものは一等級のグース(ガチョウ)ダウン100%を使うが、フィンランドやロシアで販売するものにはフェザー混じりやダック(アヒル)ダウンも使っている。もちろん価格も違うがね。」
つまり、ヘルシンキでお土産で買ったヨーツェンよりも、我々が販売するヨーツェンの方が品質が高いということですから、これは私たちにとっては嬉しい話でした。