当店のアランセーターとスコットランド製の柄編みセーターとの違いについて

当店のアランセーターをスコットランド製の近似品と混同されて問い合わせをされる方が多いようです。

アランセーターの発祥地はアイルランドのアラン諸島(Aran Islands)です。英国のスコットランドにあるアラン島(Arran)とは無関係です。当社で扱うアランセーターはすべてアイルランドのアラン諸島とその周辺の編み手によって編まれたもので、スコットランドで編んだものではありません。

当社のアランセーターと混同されることが最も多いのが、スコットランドのInverallanというニットブランドの商品です。が、両者は産地も違いますし、AranとArranとallanでは綴りも全く違います。そもそもLLというスペルはウェールズ地方によく見られる表記で、ラ行よりも英語のthやドイツ語のch(バッハのハ)に近いのどを鳴らすような発音をします。例えば Llangollenという地名がありますが、これは日本の多くのガイドブックがカタカナではスランゴスレンと表記しています。ですので、もしかしたらInverallanもインバーアランではなく、インべラスランとかインバアフランと書く方が現地の発音に近いのかもしれません。日本人がRとLの区別が苦手なことを幸いに日本の取扱業者がアランセーターとの混同を意識的に図ったものではないか、と考えるのは、私だけののひねくれた思いでありましょうか。

但し、誤解のないように申し上げますが、Inverallan自体はそれはそれでとても良質なセーターです。私どもで扱うアランセーターは編み手がその裁量で自由に編んだものが多いので、編み手によって柄もサイズもまちまちで、販売にあたってはとても手間暇が掛かり、私どものような小規模の専門店でないとなかなか取り扱うことができません。対して、Inverallanはハンドニットでありながら誰が編んだものでも柄が全く同じでサイズもほとんど同じ、に仕上がっています。これは相当に厳重なクオリティコントロールがないとできない芸当ですし、大量販売にも向いています。アラン諸島周辺で編まれたリアルなアランセーターに固執するのでなければ、Inverallanは大変良い選択肢のひとつではないかと思います。

(文責・野沢弥一郎 2009年12月18日記)