アランセーターとは (改訂版)ジャックノザワヤ

アランセーターは自他共に認める当店の看板商品です。お客様の問い合わせもずば抜けて多いことから、アランセーターだけ別項目で取り上げることにしました。(2023.08.01.改訂)

★アランセーターとは

『アランセーターの真実』 文・野沢弥市朗 (野沢弥一郎) 記・2001年10月
(本文は、自著『アイルランド/アランセーターの伝説』の一部を要約したものです。)

「アランセーター」をご存じだろうか。
一般には単に「フィッシャーマンセーター」とも呼ばれ、わが国でも1970年代初頭に大流行した、縄編みの柄が浮き出すように入った白いセーターであり、その発祥は、アイルランド西岸のアラン諸島で女たちによって編まれたものである。そして、今でも島ではこのセーターが編み続けられている。
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以下には、専門誌に寄稿した野沢の文章などを載せています。
拙著発売以降に発見できたことなども書いていますので、ぜひお読みいただき、
アランセーターへの理解を深めてください。

専門誌への寄稿(日本ヴォーグ社・毛糸だまNo.159. 2013年9月)

この一文は使用している画像も含めて、アランセーターの歴史について大変わかりやすくよくまとまっています。ぜひご一読ください。

専門書への寄稿(日本ヴォーグ社・世界の伝統ニット2. 2013年11月)
切り口を変えてアランセーターを巡る5人のアイルランド女性にスポットを当てて書いてみました。

三田評論2017.07.三人閑談「アイルランドへようこそ」
卒業37年にして、初めて母校に貢献できました。

米富繊維・小冊子への寄稿「モーリンに捧ぐ」(2021年11月15日)
モーリンが私に編んでくれた特別の一枚を多くの方に共有してもらいたくてレプリカを企画しました。
そのときに寄せた最新の一文です。

★商品の区分(定義)

一口に「アランセーター」といっても、実に広い解釈があります。アランセーターも多様化しています。もはや本物か偽物かの議論をしている時代は終わりました。どこでどの様に編まれているのか、そのアランセーターが生まれた存在意義にどれだけの価値があるのか、をそれぞれに認識していただくことが重要です。当店での品揃えの紹介を中心にご案内します。

Aran Islands <アラン・アイランズ>    
当社が1987年から長年扱い続けていたもので、「Aran Islands」のブランドが付きます。アランセーターの発祥地である、アラン諸島(イニシモア、イニシマン、イニシイアの3島)の編み手によって、一枚ずつ違う柄で(インディビジュアルに)、自由に編んだもので、これらは、ゴルウェイ・ベイ・プロダクツ社GalwayBayProductsが世界中に販売をしていましたが、2001年に供給を休止しました。当社ではその時に残った数百枚の在庫を全量引き取り以降も販売を続けましたが、それも2013年に底をつきました。手元に資料として非売品扱いの数枚を残しているのみで、販売に供せるセーターは持っていません。
近頃は、ネットオークション等で時々出品されることがあるらしく、私に鑑定じみた意見を求められることがあります。できるだけ対応はしていますが、ウールの質や編みのテンションなどは画像だけではわからないことも多いので、私の感想はお墨付きを与えるようなものではないことをご理解ください。

※CLEO <クレオ>
クレオは1936年創業のダブリンの専門店で1940年代からアラン諸島の編み手による珠玉のアランセーターを扱い続けています。アランセーターの黎明期を知る店であり、当主キティ・ジョイス(故人)からは拙著「アランセーターの伝説」を執筆する際、貴重な話を数多く取材させてもらいました。多くのアランセーターが世界中に普及していくなかで、質より量を求める風潮からハンドニットのレベルダウンに疑問を感じたキティは、1940年開催の「アランセーター・コンテスト」に集まった50枚以上のアランセーター(現在その一部はアイルランド国立博物館所蔵)こそがアランセーターの最高峰であり、そのセーターのクオリティを維持し続けることが大切と、アラン諸島に限定せず広くアイルランド国内の優秀な編み手を募り、クラフトとしてもまたファッションとしても世界のトップレベルに通用するアランセーターを提供し続けています。編み柄はもちろん、スタイリングからリブ編みの先の細部に至るまで意匠を凝らしたクレオのアランセーターはエラボレート・アランElaborate Aran (elaborate=凝りに凝った、の意)と称され、他のアランセーターとは一線を画しています。
当店ではこのエラボレートアランを2000年前後に少しだけ扱ったことがありますが、レディスが中心でしかも相当に高価であったため、取り扱いを控えてきました。しかし、キティもなくなり、このセーターを日本で紹介できるのは当店以外にはないだろうと思い立って、現当主でキティの娘サラに取り扱いを申し入れたところ快諾を得て、2022年より取引を再開することになりました。この貴重な珠玉のエラボレートアランをダブリンのクレオ以外で入手できるのはもちろん当店だけです。
クレオのエラボレートアランの在庫はこちらからご覧ください。

※O’Maille <オモーリャ>  
アラン諸島の玄関口、ゴルウェイにあるショップ「オモーリャO’Maille」は1938年からアラン諸島の編み手と繋がりを持っていました。ここで扱うアランセーターは、編み手をアラン諸島とその周辺のアイルランド西岸地方の熟練度の極めて高い女性たちに限定し、オモーリャの厳格な指示のもとにハンドニットで編まれる高いレベルのアランセーターです。拙著執筆の取材の際に懇意になり、2011年より特別な関係を築き、当店での販売を開始しました。オモーリャのアランセーターがゴルウェイの店以外で入手できるのは当社だけです。
オモーリャのアランセーターの在庫はこちらからご覧いただけます。

※Aran Legend<アラン・レジェンド>
2012年より始めたアラン・レジェンドは、日本におけるアランセーターの第一人者である野沢弥一郎(弊社代表)の監修のもと、当社指定の糸とオリジナルなスタイルをベースに、 アイルランド国内で優秀な編み手によってハンドニットされるクラシックなアランセーター。当社が独占的に販売をしています。
アランレジェンドのアランセーターの在庫はこちらからご覧ください。

※GALWAY WOOL <ゴルウェイウール>
アイルランド純血原種の羊ゴルウェイシープは従来もっぱら食用に供されてその白いウールは流通ルートが確立できてなかったことからやむなく廃棄されてきましたが、このゴルウェイシープを飼育する40数カ所の小規模な牧場を組合組織化し、品質管理を徹底した上でブランドウールとして確立させたのがゴルウェイウールであり、2022年から市場に出ることになりました。ラノリンとエアーを豊富に含んだ弾力にあふれる、素朴ですがとても魅力的なウールです。当社はいち早くこのウールに着目しファームを訪れ直談判。ゴルウェイウールで編まれたアランセーターを商品化することに成功しました。ウールからセーターに製品化するコーディネートはゴルウェイ郊外の手芸店アイリッシュ・ファイバー・クラフターズと協業、新しい切り口で始まった21世紀からの画期的なアランセーターです。

ゴルウェイウールのアランセーターの在庫はこちらからご覧ください。

―当社が「アランセーター」として販売するのはここまでです。―

※英国(スコットランド)など、アイルランド以外の欧州地域で編まれるもの…
アランセーターの発祥地はアイルランドですが、アイルランド以外の国からも「アランセーター」が発信されることはあります。特に英国(スコットランド)製のインバーアランInverallanというブランドとは混同されることが多いので、一文をしたためました。こちらをご覧下さい。

インドや中国など新興国で編まれるもの…
新興国の場合、手編みと言っても、ボディばかり編む人や腕だけをせっせと編む人、リブ編みだけ作る人、など、分業制になっていて、各パーツの組立もまた別の人がひたすら編み合わせる、というもの。均一な品質のものを大量に製造する仕組みが出来ています。気を付けなければいけないのが、インドやボスニアなどで各パーツを大量に編ませてから、前身頃、後身頃、両袖、の最終的な編み合わせ工程だけをアイルランドで行うことにより、「メイド・イン・アイルランド」の表記で販売されているものがあるらしい、ということです。「アイルランド製のハンドニット」なのに価格が妙に安すぎるといったようなものは、この手の可能性が高いので注意が必要です。

マシンニット(機械編み)…
コンピュータ制御された最新のニッティングマシンの技術革新はめざましく、下手なハンドニットを凌駕します。手編みでは困難なテクニックもいとも簡単にこなしてしまいます。大量生産だけでなく、少量の製造に対応もできるようになっていますので、マシンニットのセーターだって決して侮れません。アイルランドにも多くのマシンニットの会社があり、それぞれが独自にアランセーターをアレンジして新しい提案を続けています。アイルランド西部のドネガル県やメイヨー県などには生産拠点が多く、それらの製品はアラン諸島やゴルウェイ市内のギフトショップにも山積みされていますし、我が国にもたくさん輸入されています。
 マシンニットによるアランセーターということでは、2021年に特筆すべき素晴らしいセーターが山形の米富繊維から発表されました。ベースが私が宝物としている私物のアランセーターであり、この制作にあたり当社も全面的に協力をいたしました。おそらく世界のどこも真似のできない世界一のマシンニットによるアランセーターであると確信します。詳しくはこちらをご覧ください。当社では直接の販売はしませんが、斡旋紹介はしています。

★商品リスト一覧

※Aran Islands<GalwayBayProducts> …現在販売に供せるセーターはございません

※CLEO<クレオ>…詳細な在庫一覧表はこちらへ

※O’Maille <オモーリャ> …詳細な在庫一覧表はこちらへ

※Aran Legend <アラン・レジェンド>…詳細な在庫一覧表はこちらへ

※Galway Wool <ゴルウェイ・ウール>…詳細な在庫一覧表はこちらへ

★色と糸について

私どもでは、アランセーターの色を、下記のように呼んでいます。

Bainin(バイニンorボイニーン)…いわゆる、キナリ(生成り)です。ゲール語で「そのまま」(ボイニーン、と発音)の意味で、アランセーターでは、最もよく知られた色です。もちろん、未染色で、脂分が程良く残る程度に軽く洗浄しています。

糸のサプライヤーは編まれた時期によって数社あり、そのクオリティは均一ではありません。糸質がハードなものやソフトなもの、色も黄色味がかっているものからより白に近いものまで、かなりさまざまです。一概には言えませんが、古い時期のものほど、ハードで黄味っぽいものが多いです。オモーリャとアランレジェンドは、現在アイルランド・ドネガル県の海辺の村キルカーにあるDonegal yarns社(旧Kilcarra社を再興)からハンドニット専用に開発された3プライ(3本撚り)の糸の供給を受けています。
 また、Galway Woolは、アイルランド原種のゴルウェイシープが白い羊しかいないため、ボイニーンの一色だけのカラー展開となっています。Galway Woolは2プライ(2本撚り)の毛糸ですが、膨らみと弾力性に優れているので、3プライに匹敵する立体感あふれる柄模様が表現できます。その上3プライものと比べて3分の2の重量しかないので大変軽量に仕上がります。

余談。時々「まったく脱脂していない糸のモノはないのですか」という、お問い合わせをいただきますが、恐らくその方は、未脱脂ウールというモノを知らない方でしょう。臭いも強く、触るのも気が引けるほどベタベタで、とても快適に着られるものではありません。実際のところ、アラン諸島でも未脱脂のままのウールでセーターを編んでいた、という事実はなく、ある程度の洗浄は施されておりました。

Black&Silver(ブラック・シルバー)…いわゆる「焦げ茶色」に相当します。ここでブラックというのは染めた黒色ではなく、ブラックシープの意味でして、つまり焦げ茶色の羊の毛のそのままのことを指します。ただ、ブラックシープの糸だけでセーターを編むと、べたっとした濃い茶色で編み柄が沈んでしまうので、これにグレーシープの毛をブレンドしています。こうすることで、編み柄の立体感をわかりやすくしています。もちろん、このブラック・シルバーも未染色です。

Oatmeal(オートミール)…ライトグレーです。グレーシープ(グレーの羊の無染色の毛)に少しだけブラックシープ(焦げ茶)を混ぜ合わせたカラーです。グレーシープだけでは冷たいイメージになりがちなところをブラックシープを混ぜることで温かみを醸しています。明るい色が欲しいけれど、バイニンは白すぎて苦手、という方に近年好評です。

以上が、染めていないナチュラルカラーです。以下は、染めた糸なので、無染色のものとは糸の香りや硬さといった風合いが異なります。

Donegal Indigo…インディゴブルーの糸に、ルーペで拡大して見ないと分からないぐらいの細かさで、赤や黄色、ブルーなどのきれいな糸を混ぜ込んでいます。アイルランド特産の ドネガルツイードを彷彿(ほうふつ)させるハンドニット専用のコシのある糸で、編み柄の凹凸感を存分に表現しています。

Dark Navy dyed…フィッシャーマンネイビーと呼ばれる濃紺色です。アランセーターのルーツとなったガンジーセーターの時代から漁師の着るセーターと言えばこの色でした。かつて島では色やグレーのセーターをドボンと紺の染料に漬け込んで製品染めをしたものも多い様でしたが、いかんせんそれでは見栄えも悪いので、現在は芯まで染まった先染めの紺糸によって編まれています。ただ、これほど濃い糸を手編みするのは、目の悪い老女たちには酷で、熟練の齢のいった編み手ほどこの色を編みたがらない、という困った問題があります。

Charcoal dyed…チャコールグレーです。アランセーターというとどうしてもカントリー的なイメージになりますが、このチャコールは、都会的というかやや無機質な、モード系なコーディネートにもよく合う、ファッショナブル・カラーです。

その他、染糸は無限に展開できますから、ユニークな色のアランセーターもどんどんと出現しています。

★サイズについて

表示サイズは、胸囲の寸法をインチで表記したものです。
ただし、最初にお断りしておかなければいけないのは、ハンドニットのアランセーターは、その編み柄が一枚ずつ違うように、サイズもまた一枚一枚が異なるということです。古いモノほどそうです。ですから、サイズはあくまでも目安に過ぎない、ということをまずご理解下さい。「自分のおばあちゃんが、孫のために編んでくれた」といった、おおらかな気持ちでないと、アランセーターは購入できないでしょう。

表記サイズを、一般の日本人の体型に当てはめますと、おおよそ以下の通りになります。

個々の寸法については、セーターごとに添えてある実測表をご覧下さい。着丈、袖丈、袖廻りなど、同じサイズ表記でも、かなりばらつきがあることがお分かりいただけると思います。

撮影の下敷きはすべて10㎝の方眼の布で共通です
実測表について、いくつかご注意を。

まず、計っているのが伸縮性のあるニットですので、実際の着用では、かなり伸びるということをご承知下さい。

また、裄丈(E)は、首の後ろから袖口までを直線で計っていて、シャツのように肩口を経由した数値ではないので、数値はすべてかなり小さくなっていますが、実際着てみると、極端に短いものはありません。決してシャツの裄丈と一緒にはしないで下さい。

なお、肩巾(C)の数値はほとんど無視していただいても構いません。これは、単純に身頃のパーツと袖のパーツとの縫い合わせの位置で計ったもので、編み手によって、まったくのセットインで垂直的についているモノもあれば、ラグランっぽく斜めに袖付けしているものもありますので、着用感を大きく左右するものではありません。参考値としてみて下さい。

ときどき、「縮みますか」と聞かれます。もし漁師のようにこれを着て海に出てずぶぬれになるような着方をするのならば縮みますが、普通の着方をする限りでは、縮みません。むしろ、着ていくうちに身体になじむのと、セーター自体の自重で、大きくなったように感じるはずです。逆に、縮ませたいのならば、セーターを熱湯に浸して、コインランドリーのような高温乾燥機に放り込んで下さい。ウールがフェルト化して確実に縮みますが、どのくらい縮むかは結果次第ですので、保証の限りではありません。

★手入れについて

「手入れはどうしたらいいですか」と、よく聞かれますが、一番いいのは「何もしない」ことです。ブラシを当ててほこりを払うだけで、特別な手入れの必要はまったくありません。

それでも、洗いたいという場合。ドライクリーニングもできますが、ドライに出すと、どうしても毛糸が硬化してしまうこと、また、脂分が抜けてしまうこと、これは避けられませんので、ご理解下さい。お薦めするのは、手洗いです。最近の洗濯機には「手洗いモード」という、優しい回転を選べるものも増えてますので、こういう洗濯機ならば機械洗いも可能です。一番手っ取り早いのは、信用できるクリーニング業者に「手洗いで」と、依頼することでしょう。

糸がほつれた場合。手編みセーターですので、糸の継ぎ目などで、ほつれが出る場合があります。自分で結べる程度なら、裏から結び直していただくだけで直ります。もし、糸が足りない場合はご連絡いただければ補修用の糸をお送りします。また、大きくほつれてしまったり、虫食いなどでかがりが必要な場合は、当方まで製品をお送りいただければ、実費で補修いたします。

★ご購入について

アランセーターについても、当店の他の商品と同様に、代引き配送やクレジットカード(クロネコwebコレクト)の利用によるご購入が可能です。「商品の販売について」をご参照下さい。
ただ、商品の性格が特殊であり、しかも、高価なものですので、ご購入をご希望の方は、まずは、当方まで、メールなどでご連絡を頂戴したく存じます。その上で、あなたに最もふさわしい一枚を一緒にお選びして差し上げたいと、願っております。ご連絡お問い合わせはこちらからどうぞ。

ご連絡をいただく際には、下記の項目をお知らせ下さい。品選びの目安となります。
①ご希望のスタイルと色
②候補として検討されている商品のナンバー、
および、ご着用の方の
③性別
④年齢
⑤身長、体重
⑥胸囲、ウエスト(スラックスのサイズ)
⑦希望する着方(ピッタリ着たいか、ゆったり着たいか、ダボっと着たいか)
⑧その他、身体的なご特徴、たとえば腕が長いとか、胸板が厚いとか、お腹だけ出ている、なども、判断材料としてできるだけお書き添え下さい。

⑨なお、必ず本文中に、ご送信者の実名をフルネームでご記載下さい。ビジネスメールですので、仮称やハンドルネームは原則的にお断りいたします。また、匿名(無名)のお問い合わせに対しては、お答えをいたしかねますので、ご了承下さい。

⑩ご住所もしくはお住まいの都道府県
⑪差支えなければ、ご連絡のできる電話番号(ご体格の把握が難しい場合など、電話でやり取りしたほうがご案内がスムーズに進む場合があります。)

よろしくお願い申し上げます。