アランセーター

アランセーターは自他共に認める当店の看板商品です。お客様の問い合わせもずば抜けて多いことから、アランセーターだけ別項目で取り上げることにしました。(2017.7.21.改訂)

★アランセーターとは

 『アランセーターの真実』 文・野沢弥市朗 記・2001年10月
(本文は、自著『アイルランド/アランセーターの伝説』の一部を要約したものです。)

「アランセーター」をご存じだろうか。
一般には単に「フィッシャーマンセーター」とも呼ばれ、わが国でも1970年代初頭に大流行した、縄編みの柄が浮き出すように入った白いセーターであり、その発祥は、アイルランド西岸のアラン諸島で女たちによって編まれたものである。そして、今でも島ではこのセーターが編み続けられている。
(続き)全文を読む

★商品の区分(定義)

一口に「アランセーター」といっても、実に広い解釈があります。当店での品揃えの紹介を兼ねて、順にご案内します。

Aran Islands <アラン・アイランズ>    
※アランセーターの発祥地である、アラン諸島(イニシモア、イニシマン、イニシイアの3島)の編み手によって、一枚ずつ違う柄で(インディビジュアルに)、自由に編んだもの…

狭義の「本物のアランセーター」です。当社が長年扱い続けていたもので、「Aran Islands」のブランドが付いています。これらは、ゴルウェイ・ベイ・プロダクツ社GalwayBayProductsが世界中に販売していた物ですが、2001年に供給を休止しました。当社ではその時に数百枚の在庫を全量引き取り以降も販売を続けていましたが、それも2013年に底をつきました。手元に資料として非売品扱いの数枚を残しているのみで、販売に供せるセーターはありません。

①O’Maille <オモーリャ>   
①編み手はアラン諸島とその周辺のアイルランド西岸地方の熟練度の極めて高い女性たちに限定、コーディネータの厳格な指示のもとにハンドニット…

アラン諸島の玄関口、ゴルウェイにあるショップ「オモーリャO’Maille」に依頼して熟練の編み手に限定して日本向けのサイズ取りで特別に編んでもらっているもので、当店では2011年秋より販売を開始しました。当社では、ここまでを広義に「本物のアランセーター」と定義しています。オモーリャのアランセーターがゴルウェイの店以外で入手できるのは当社だけです。編み手、スタイル、糸、オリジナリティ、のどの観点から見ても、現在商業的に入手しうる限りのアランセーターの中で、最も優れたアランセーターであると自負しております。

②Aran Legend<アラン・レジェンド>
②発祥国であるアイルランド国内に住むアイルランド人の編み手が完成形まで一人で編んだもの…

純然たる「メイド・イン・アイルランドのハンドニット」。当社では2012年秋より販売開始の「アラン・レジェンド Aran Legend」がこれに相当します。アラン・レジェンドは、当社指定の糸とオリジナルなスタイルをベースに、アイルランド南部の都市コーク郊外にあるアテナ社Athena knitwearの協力を仰ぎ、アイルランド国内の優秀な編み手によって編まれているブランドで、日本では当社が独占的に販売をしています。ハンドニットの「アラン模様のセーター」です。レベルはかなり高いです。

―当社が「アランセーター」というくくりで販売するのはここまでのレベルです。以下はご参考までに。―

英国(スコットランド)など、アイルランド以外の欧州地域で編まれるもの…
アランセーターの発祥地はアイルランドですから、アイルランド以外の国から「本物のアランセーター」が生まれることはありえません。特に英国(スコットランド)製のインバーアランInverallanというブランドとは混同されることが多いので、一文をしたためました。こちらご覧下さい。

インドや中国など新興国で編まれるもの…
新興国の場合、手編みと言っても、ボディばかり編む人や腕だけをせっせと編む人、リブ編みだけ作る人、など、分業制になっていて、各パーツの組立もまた別の人がひたすら編み合わせる、というもの。均一な品質のものを大量に製造する仕組みが出来ています。気を付けなければいけないのが、インドやボスニアなどで各パーツを大量に編ませてから、前身頃、後身頃、両袖、の最終的な編み合わせ工程だけをアイルランドで行うことにより、「メイド・イン・アイルランド」の表記で販売されているものがあるらしい、ということです。「アイルランド製のハンドニット」なのに価格が妙に安すぎるといったようなものは、この手の可能性が高いので注意が必要です。

マシンニット(機械編み)…
コンピュータ制御された最新のニッティングマシンの技術革新はめざましく、下手なハンドニットを凌駕します。手編みでは困難なテクニックもいとも簡単にこなしてしまいます。大量生産だけでなく、少量の製造に対応もできるようになっていますので、マシンニットのセーターだって決して侮れません。アイルランド西部のドネガル県やメイヨー県などには生産拠点が多く、それらの製品はアラン諸島のギフトショップにも山積みされています。

★商品リスト一覧

(色別サイズ別の詳細な在庫リストはショッピングサイトをご覧ください)

①O’Maille <オモーリャ>
丸首プルオーバー

 

57,000円+税 (国内送料無料)

②Aran Legend <アラン・レジェンド>
衿付きカーディガン・ボタンフロント

 

 

 

46,000円+税 (国内送料無料)

 

丸首前開きベスト

 

39,000円+税 (国内送料無料)

★色と糸について

私どもでは、アランセーターの色を、下記のように呼んでいます。

Bainin(バイニン)…いわゆる、キナリ(生成り)です。ゲール語で「そのまま」の意味で、アランセーターでは、最もよく知られた色です。もちろん、未染色で、脂分が程良く残る程度に軽く洗浄しています。

糸のサプライヤーは編まれた時期によって数社あり、そのクオリティは均一ではありません。糸質がハードなものやソフトなもの、色も黄色味がかっているものからより白に近いものまで、かなりさまざまです。一概には言えませんが、古い時期のものほど、ハードで黄味っぽいものが多いです。現在はアイルランド・ドネガル県の海辺の村キルカーにあるDonegal yarns社(旧Kilcarra社を再興)からハンドニット専用に開発された糸の供給を受けています。

余談。時々「まったく脱脂していない糸のモノはないのですか」という、お問い合わせをいただきますが、恐らくその方は、未脱脂ウールというモノを知らない方でしょう。臭いも強く、触るのも気が引けるほどベタベタで、とても快適に着られるものではありません。実際のところ、アラン諸島でも未脱脂のままのウールでセーターを編んでいた、という事実はなく、ある程度の洗浄は施されておりました。

Black&Silver(ブラック・シルバー)…いわゆる「焦げ茶色」に相当します。ここでブラックというのは染めた黒色ではなく、ブラックシープの意味でして、つまり焦げ茶色の羊の毛のそのままのことを指します。ただ、ブラックシープの糸だけでセーターを編むと、べたっとした濃い茶色で編み柄が沈んでしまうので、これにグレーシープの毛をブレンドしています。こうすることで、編み柄の立体感をわかりやすくしています。もちろん、このブラック・シルバーも未染色です。

Oatmeal(オートミール)…ライトグレーです。グレーシープ(グレーの羊の無染色の毛)に少しだけブラックシープ(焦げ茶)を混ぜ合わせたカラーです。グレーシープだけでは冷たいイメージになりがちなところをブラックシープを混ぜることで温かみを醸しています。明るい色が欲しいけれど、バイニンは白すぎて苦手、という方に近年好評です。

以上が、染めていないナチュラルカラーです。以下は、染めた糸なので、無染色のものとは糸の香りや硬さといった風合いが異なります。

Donegal Indigo…インディゴブルーの糸に、ルーペで拡大して見ないと分からないぐらいの細かさで、赤や黄色、ブルーなどのきれいな糸を混ぜ込んでいます。アイルランド特産の ドネガルツイードを彷彿(ほうふつ)させるハンドニット専用のコシのある糸で、編み柄の凹凸感を存分に表現しています。

Dark Navy dyed…フィッシャーマンネイビーと呼ばれる濃紺色です。アランセーターのルーツとなったガンジーセーターの時代から漁師の着るセーターと言えばこの色でした。かつて島では色やグレーのセーターをドボンと紺の染料に漬け込んで製品染めをしたものも多い様でしたが、いかんせんそれでは見栄えも悪いので、現在は芯まで染まった先染めの紺糸によって編まれています。ただ、これほど濃い糸を手編みするのは、目の悪い老女たちには酷で、熟練の齢のいった編み手ほどこの色を編みたがらない、という困った問題があります。

Charcoal dyed…チャコールグレーです。アランセーターというとどうしてもカントリー的なイメージになりますが、このチャコールは、都会的というかやや無機質な、モード系なコーディネートにもよく合う、ファッショナブル・カラーです。

★サイズについて

表示サイズは、胸囲の寸法をインチで表記したものです。
ただし、最初にお断りしておかなければいけないのは、本物のアランセーターは、その編み柄が一枚ずつ違うように、サイズもまた一枚一枚が異なるということです。古いモノほどそうです。ですから、サイズはあくまでも目安に過ぎない、ということをまずご理解下さい。「自分のおばあちゃんが、孫のために編んでくれた」といった、おおらかな気持ちでないと、アランセーターは購入できないでしょう。

表記サイズを、一般の日本人の体型に当てはめますと、おおよそ以下の通りになります。

個々の寸法については、セーターごとに添えてある実測表をご覧下さい。着丈、袖丈、袖廻りなど、同じサイズ表記でも、かなりばらつきがあることがお分かりいただけると思います。

実測表について、いくつかご注意を。

まず、計っているのが伸縮性のあるニットですので、実際の着用では、かなり伸びるということをご承知下さい。

また、裄丈(E)は、首の後ろから袖口までを直線で計っていて、シャツのように肩口を経由した数値ではないので、数値はすべてかなり小さくなっていますが、実際着てみると、極端に短いものはありません。決してシャツの裄丈と一緒にはしないで下さい。

なお、肩巾(C)の数値はほとんど無視していただいても構いません。これは、単純に身頃のパーツと袖のパーツとの縫い合わせの位置で計ったもので、編み手によって、まったくのセットインで垂直的についているモノもあれば、ラグランっぽく斜めに袖付けしているものもありますので、着用感を大きく左右するものではありません。参考値としてみて下さい。

ときどき、「縮みますか」と聞かれます。もし漁師のようにこれを着て海に出てずぶぬれになるような着方をするのならば縮みますが、普通の着方をする限りでは、縮みません。むしろ、着ていくうちに身体になじむのと、セーター自体の自重で、大きくなったように感じるはずです。逆に、縮ませたいのならば、セーターを熱湯に浸して、コインランドリーのような高温乾燥機に放り込んで下さい。ウールがフェルト化して確実に縮みますが、どのくらい縮むかは結果次第ですので、保証の限りではありません。

★手入れについて

「手入れはどうしたらいいですか」と、よく聞かれますが、一番いいのは「何もしない」ことです。ブラシを当ててほこりを払うだけで、特別な手入れの必要はまったくありません。

それでも、洗いたいという場合。ドライクリーニングもできますが、ドライに出すと、どうしても毛糸が硬化してしまうこと、また、脂分が抜けてしまうこと、これは避けられませんので、ご理解下さい。お薦めするのは、手洗いです。最近の洗濯機には「手洗いモード」という、優しい回転を選べるものも増えてますので、こういう洗濯機ならば機械洗いも可能です。一番手っ取り早いのは、信用できるクリーニング業者に「手洗いで」と、依頼することでしょう。

糸がほつれた場合。手編みセーターですので、糸の継ぎ目などで、ほつれが出る場合があります。自分で結べる程度なら、裏から結び直していただくだけで直ります。もし、糸が足りない場合はご連絡いただければ補修用の糸をお送りします。また、大きくほつれてしまったり、虫食いなどでかがりが必要な場合は、当方まで製品をお送りいただければ、実費で補修いたします。