客「こないだ作ったアレに合わせて…」 店「こないだ、っていつ頃?」 客「二、三年前かな…」。 って、調べてみると実は八年前…。この時間感覚のズレはある程度仕方のないことで、店はお渡しした時点でその商品から手を離れますが、客はそれを手元で使っているうちは時の経過がとてもゆっくりになるものなのです。ついちょっと前、が、十年前だったりすることもざらで、それだけ愛着を持って使い続けてくれた証拠なんですから、ありがたい誤解です。
このように、買う側の人の時間感覚は売る側が考えているよりも案外とても長くて、売る側は毎年毎年どうしようかと刹那的に一年単位で品ぞろえを考えてしまうのに対し、お客様の方は、来年これ買おう、再来年はこれで、あれは三年後にして、と複数年の購買計画を組むのを楽しみにしている人も思いのほかいらっしゃいます。
そんなことの中から申し訳ない事態が生まれます。いつまでもあると思われている商品がなくなることです。定番として長く続けますから、という仕入れ先の言葉を信じて扱い始めたのに、たった一年で廃番になったり、急に取引条件が厳しくなって仕入れができなくなったり。「ずっと続けるというから買うのは一年待ったのに、だったら去年無理してでも買っとけばよかったよ」などと言われると、約束を守れずウソついたことになっちゃってごめん、というすまない気持ちになります。
この事態は、モノ溢れと徹底的なコストダウン傾向の昨今、以前よりもますます顕著になっている気がします。なので月並みですが「来年あるかどうかわかんないからモノがあるうちに買っといて」というほかありません。決して押し売りをするつもりはないのですが、後の祭りになってしまっては元も子もないのです。
総理大臣は衆院解散だけはウソをついても許されると言われています。私にも継続定番の廃止にはそんな特権がもらえないものかと思います。(弥)