倶樂部余話【364】ダブリンとグラスゴーで思ったことあれこれ(2019年2 月1日)


毎年2月の倶樂部余話は、海外出張報告の形を取っていまして、今号もそういきますが、今年は何しろどこへ行っても話題はブレクジット(英国のEU離脱)のことばかり。それも熱く語るとか深刻に心配しているとかいう感じではなくて、皆一様に、英国の体たらくぶり漂流ぶりに呆れかえっている、当の英国民ですら他人事のように冷めきっている、という印象でした。
特にアイルランドでは、長年英国に虐げられてきましたから、いい気味だ、ざまあみろ、くらいの嘲笑ぶりで、他のEU26カ国を味方につけ今は英国よりもずっと優位な立場にいるわけで、これはもしかしたら英愛の歴史上はじめてのことなのかもしれません。
その中で私が意外に感じたのは、アイルランドは必ずしも北アイルランドを一緒にしたいと欲しがってはいないということでした。全島統一はアイルランドの悲願だと思っていたのですが、その思いを放棄することがイコール和平合意であったので、今その感情は薄くて、しかもかつてよりもアイルランドは発展し反対に北アの経済は衰退したので、今更北アを併合してもお荷物を抱え込むだけ、というところらしいのです。といって、英国も北アを切り離そうとしようもんなら、じゃスコットランドの独立はどうなんの、というジレンマに陥るので、そんな素振りは見せられない。ブレクジットで一番かわいそうなのはどちらからもお荷物扱いを受けている北アイルランドの人たちなんだろうと思います。

さて、自分の仕事の方ですが、今まで散々約束を破られてもう絶対に許さないぞ、と決めて臨んだところ2社(J社とM社)とまた取引をしてしまいました。謝られると弱い、頼まれると弱い、そんなふうに情にほだされてしまってはバイヤー失格とはわかっているのですが、はい、ダメですね、つくづくお人好しな自分に呆れました。

初めて参加したグラスゴーのトレードフェア、思惑以上の成果があり、行っただけのことはありました。が、その後がいけなかった。13年ぶりのグラスゴーなので、いい思い出の残っているティールームとレストランを訪ねましたが、世界的に有名なそのティールームは閉鎖中でやむなく冷たい雨の中懸命に坂道を昇って行った支店もこれまた休業中。webサイトにはそんなことは一言も書いてない。この悲しい気持ちを癒やしてくれるはずの思い出のレストランでしたが、これまたオーナーが変わっちゃったのか、以前のフレンドリーで活気のある店内とは大違い、料理も下手くそ、と、散々な夜。空港では深夜の最終便の待合で寝入ってしまい、叩き起こされてダッシュする始末。13年前は大好きな街だったグラスゴーは今度は大嫌いになってしまいました。いや、しかし待てよ、もしかしたら、私の店も、同じように言われてはいないだろうか、ずっと前はお気に入りの店だったのに今では…と。そう、人のふり見て我が…、であります。反省反省。

思えば、今回は、常に滑り込みセーフ、の繰り返しでした。帰国便接続の空港バス停に、余裕をみて予定の3分前に着いたところ、いきなり5秒後にバスが来てすぐに発車。間に合ったから良かったものの、時刻前発車は日本なら補償問題になるほどの事件なんだけどなぁ。(弥)