倶樂部余話【373】三通の招待状(2019年11月1日)


一週間で三回も首都圏を日帰り往復するのは多分初めてかもしれません。予期せぬ招待状が三つ届いたからでした。

日曜日。一つ目の招待状によって、私たち夫婦は新横浜にある巨大スタジアム内のラウンジ付VIP席でラグビーを観戦しました。日本対スコットランド。大一番の大勝利に興奮のるつぼでした。これ以上話しても羨ましがられるだけなので、これはこの辺で。そしてハイネケンをたっぷりと飲みました。

水曜日。二つ目の招待状は、当店がこの六月に移動ショップを行なった島田市金谷「And Wool」の村松氏から。新ブランドの発表会を某大手アパレル企業のサポートを受けて代官山でやります。当日はデザイナー自身が編み物のデモもやるのでいらしてください、との誘い。光あふれるショールームでファッションの先っぽにいる人ばかり、と、場違い感いっぱいの中、村松氏の演出は、静岡の料理、静岡の飲み物、静岡の草花、静岡の作り手、とこちらが恥ずかしくなるほどの静岡づくしのもてなし。
嬉しいじゃないですか。その本拠地、金谷の彼の店に、私は店ごと客ごとまるごと一日移してその魅力を堪能してもらうことができる。何という幸せ。奇しくも次の移動ショップの実施日は11月9日(土)と目前に迫っています。私にとってはこの展示会はそのプレイベントのようなもの。移動ショップに来てくれた人は必ず楽しめるだろう、との確信を持った水曜日の午後。そして風変わりな静岡茶を数杯いただきました。

金曜日。三通目は在日アイルランド大使から。国の通産大臣がファッション企業数社とともに来日するので歓迎レセプションに元麻布の大使公邸までいらしてください、と。更に、ファッション関係者を集めてのセミナーでアランセーターについて短い講演をお願いしたい、という内容。アランセーターの講演は過去に何度かやりましたが、意外にもファッション業界人向けには初めて。60人ほどの聴衆に20分程度の話でこれは無事に済みましたが、本当に私が言いたかったことはその後の司会者との質疑応答の中にありました。
「野沢さん、アランセーターの魅力を一言で言うと?」「静岡の小さな洋服店主の立場では決して出会うこともなかった多くの素晴らしい人達と、アランセーターをやったおかげで私は知り合うことが出来ました。アランセーターは私の人生を変えてしまったセーターです」 そしてギネスをがんがん飲みました。

これら三つはどれも一ヶ月前以内に急に入ってきたインビテーション。ただでさえ入荷ラッシュで休む間もない十月の中旬のこの時期に、一日置きに出掛けていては、当然業務は停滞気味になります。昨年はプライベートに忙しかった(倶樂部余話【361】参照)十月でしたが、今年もこの有様。どうも十月はバタバタと動くのが私に課せられた使命なのかもしれません。(弥)