倶樂部余話【一七〇】歌のチカラ(二〇〇三年三月九日)


♪あの頃のぼくらは/美しく愚かに/愛とか平和を詞にすれば/それで世界が変わると信じてた♪(「五線紙」詞・松本隆、曲・阿部恭弘、歌・竹内まりや・1980)

20年も前の歌なのに、今でも聴くたびに私の心を揺らす一節です。

この歌は10年振りの懐かしい再会を描いたもので、つまり、あの頃とは70年安保、ベトナム戦争、ウッドストックの時代を指しています。

それでは、あの頃に歌った愛や平和の歌は、世界を変えなかったのでしょうか。それはやはり愚かな行為だったのでしょうか。私は決してそうではなかったと今も信じています。毎年12月の店内にジョン・レノンを流す私ですから、歌の力は世界を変えることもできるぐらい強いものだ、そう信じていたい自分がいるのだと思います。

ここで戦争の是非を議論するつもりはありません。ただ、今ほどに、歌の持つこの力がもっと強くなってくれればいいのに、と願ってやまないときはないのです。ある人はそれを平和ボケと呼ぶのかもしれませんが、30年前に「戦争を知らない子供たち」だったオジサンは、この戦後の平和をむしろ誇りにさえ感じているのです。