倶樂部余話【380】 拝啓 大日本除虫菊株式会社様(2020年6月1日)


(※この文章は、5/29に初稿。6/1に公開しました。)
今朝、朝刊を拡げるまで、この当月の余話には全く別のことを書こうと思っていました。でも気が変わりました。キンチョーのこの広告を見てしまったからです。

広告のweb版はこちらです。

画像が見られない方のために説明しますと、新聞の全面を使った、新しいゴキブリ駆除剤の広告です。「もうどう広告したらいいのかわからないので。」と、コロナ禍で日々状況が変わり先のわからない毎日に、世の中の空気、人々の気分がどうなのか、考えあぐねて、世間の状況に応じた6つのバリエーションを並列し、詳しくはQRコードからスマホで、と誘導します。

毎年夏の前になると、楽しみなのがキンチョーの広告ですが、実は先週あたりから、今年のキンチョーはこのコロナ騒動をどう捉えて広告に取り込むのだろうか、と、思っていた矢先の今日の一面。感動しました。そして、この広告から私の得たもの、それはこんな感想です。

もうどうしたらいいのかわからない。一ヶ月先のことなど誰も見通せない。日々めまぐるしく変わるこの状況下で、みんな不安で不安でたまらない。そうなんです。でもだからといって何もしないでいいわけじゃない。想定されるいくつかの場面に応じてそれぞれに対処できる策を用意しておくことは必要なんです。6つの策を並列したこのやり方は、一見するとひとつに絞れなかったことへの逃げのように見えるかもしれないけれど、そうじゃないです。コロナという原因は同じでも、それがどう人の生活に影響を与えているのか、その状況は人によってそれぞれに違う。その違いに対応するには共通のひとつの策で間に合うはずがない。無理に絞りきらないほうがいいときだってある。それは決して逃げじゃない。様々な変化に笑いながらちゃんと対応していこうじゃないか。

これがこの広告から私の思った感想。殺虫剤の宣伝にこんなふうに考える私はおかしいでしょうか。(弥)