倶樂部余話【442】トランプ関税 (2025年8月1日)


 当店は7月決算ですので、今日8月1日は会社の元日のようなものですが、世界中の多くの人にとってはトランプ関税が一体どうなるのか、米国の動きを固唾をのんで見守っているという一日になっているんじゃないでしょうか。米国と取引のない私なんかは気楽なもので、米国内の港や空港内の貨物の税関はパニックになってないのか、通関が渋滞して長い行列ができるんじゃないか、なんてつまらぬ心配をしていますが、輸出業者にしてみれば、わがまま爺さんのご機嫌伺いに一喜一憂せざるを得ないわけで、まあ気の毒だなぁ、とは思います。

 何十年か前に、初めて直輸入をしようとしたときに、先輩の同業者から「関税はしっかり知っておいたほうがいいよ」とアドバイスされ、関税定率法とか通関士の入門書なんかを読んでわりと勉強したものですが、その厳格に決めらるはずの関税というものが、大統領の気まぐれでいとも簡単に100%とか200%みたいな常軌を逸した税率まで飛び出してころころと変わってしまっていいものなのか、私にはわけがわかりません。

 とは言っても、実のところ輸出業者は言う程そんなに困ってないんじゃないのかなぁ、とも思うのです。なにせこの10年でドルは5割以上高くなってる(最低値101円から最高値161円)ので、同じ売上を維持できればそれで5割の増収ですから、ここで15%ぐらい関税が高くなってもへっちゃらなんじゃないでしょうか。それに関税を支払うのは米国の方なので、輸出業者の財布は傷まないんです。

 対して財布が傷むのは私ども輸入業者の方です。当社の輸入相手は欧州なので、ユーロを例にしますと、この10年で為替は5割以上(最低値113円から最高値173円)上がりしかも欧州の物価自体が26%上がってますので、ざくっというと、10年前には1万円で買えたものが今は2万円出さないと買えないんです。支払う関税はEPA(貿易協定)のおかげでかなり安くなっていて助かってはいますが、それでもこの10年デフレ下の日本で仕入れ値が倍になっても売値を倍にはできないわけで、弱体化した国力がその原因であるにも関わらず、この減益を補填してくれるものはなにもないのですから、愚痴のひとつも言いたくなるってもんです。

 まあ、仕方ないか。本来なら年度初めの日には一年の抱負を語るものなんでしょうが、なんだか愚痴っぽくなりました。今日の国際ニュースがどうなることかわかりませんが、なんとかやっていきましょう。ということで、野澤屋103年目ジャック野澤屋53年目の元日の余話でありました。(弥)