倶樂部余話【441】2032年へ向けて (2025年7月1日)


 私は今年68歳になりますが、50代の頃から自分は短命でその寿命は70だと決めていました。
さすがにもう少し生きられそうかな、と感じていた矢先、倶樂部余話【405】で触れた私そっくりの叔父が昨年78歳で昇天したことから、いよいよ私も78までか、と思い始めて、じゃ引退して余生を楽しむという期間も少しだけ欲しいし、ということで、75歳でリタイア、という目標を定めました。あと7年です。まだまだ7年もあるじゃないかと思われるかもしれませんが、前の店舗から今の場所に移動してもう7年経つのですから、7年なんてあっという間です。ここで折り返しの7年、2032年に向けてじわじわと店の終活に入ることにします。
 そう決めるとやりたいことがむくむくと湧いてきました。不思議なもんですね。
 まず、クロージングアイテムの再強化。カッコよく言うとセヴィルロウ倶樂部の復権、
わかりやすく言うと、最後のスーツは当店で、という7年掛けのロングキャンペーンを張ります。幸い、当店には国内業界一人勝ち状態のAという素晴らしいファクトリーが強い味方にいます。ここが近頃最強のスタンダードモデルを発表しましたのでこれをアピールします。
 次。7年の間品揃えから欠落したままでずっと気がかりだったのがネクタイです。再開するならこの男と組みたい、というKという人物、当店がかつて何百本も売ってきたあのDのタイに国内で最も近いモノづくりをしている男と取引を再開します。たださすがに常時展開は難しいので、10月初めにまず短期のPopUpイベントとしてお披露目のスタートをします。ネクタイが欲しい人はそこまで我慢しててください。そして10月に必ず来て(見て)ください。品物には自信があります。
 それから。正しい洋服の知識を得る場所がなくなってきた、と感じてます。雑誌がその役目を果たせなくなっていて、ネットで断片的な知識を聞きかじることしかできません。
なのでもう一度、最低のことだけは店が残しておかねばなりません。今までにも倶樂部余話の中で折りに触れいろいろ書いてきましたが、改めてまとめていこうかな、と思います。ついてはメルマガを月二回にして、倶樂部余話を朝刊コラムとすれば、夕刊コラムのような糸偏雑筆(いとへんざっぴつ)(仮題)の連載を始めてみます。7年も書くだけの服屋の知識を自分が持ち合わせているか不安ですが、将来孫に読ませてもわかってもらえるような糸偏業界40余年の戯言を書いてみようと思っています。
 そして。7年後に私はリタイアしますが、後継者は考えていないので店も閉めることになります。が、この店を引き継ぎたいという人物が出てこないとも限りません。経営状態は借金のことを除けばなんとかギリギリの黒字ですし、店の運営を別会社に移すとか、誂えると揃えるを分離するとか方法は色々あります。ダブルワークでも可能かもしれません。興味のある方は一度ご相談ください。秘密は厳守します。
 今回は、今こんなことを考えています、というお話をいたしました。一つの目標が生まれて、なんだか清々しい気分です。今年の夏も暑いみたいです、しっかり乗り切りましょう。(弥)