色がどういう色に見えているのかはひとりひとり違います、だから色を伝えることはとても難しくて、色名を付けるのも腕の見せ所というところがあります。色はイメージで伝える。これです。
あるトラウザーズ(スラックス)に利休鼠(りきゅうねずみ)という色名を付けました。そもそもこの色は光源や媒体や人の視覚によって様々な色に変化して映ることこそが魅力となる色だと思ったので、誰もが(日本語のわかる人に限られますが)同じようなイメージを浮かべられるような色名を探りました。多分皆さんネットで利休鼠を検索しますよね、いろんな画像が出てきて、ああこんな感じなのね、という共通のイメージが掴めるはずです。それでいいんです。
できたばかりのフェアアイルセーターの色柄サンプルを見て、私が思わず発した「素晴らしい、まるでモネの絵画のようだね」との感嘆の声に相手の社長がニコッと微笑んだので、まんざら自分の思い違いじゃないんだな、と解釈して、この色柄(パターンとカラーリング)に勝手にモネ・ホワイトと名付け、さらに2つの色柄を選んでそれぞれにターナーとルノワールの名を冠しました。これはかなり共感を呼んだようで、気を良くして次冬用に新たな追加色を探して、これにゴッホ・イエローと名付けました。だって、ゴッホといえばイエローでしょ。
モネ・ホワイトなんていうのは私の造語ですが、ゴッホ・イエローという言葉は美術界にはれっきとして存在する言葉らしくて、それくらいゴッホのイエローは特徴的な色なんでしょう。気になって調べてみると、実はゴッホはある種の色弱のひとつで、彼に見える黄色は我々の見る黄色とは少し違う色に見えていたらしい、というのです。ハンディキャプとパーソナリティは、後ろ向きか前向きかの違いでしかないんだ、と思います。
そんな矢先、色のことでとっても悩まれて何度もメールでやり取りした末にアランセーターをご購入いただいたお客様から商品到着のメールが入りました。曰く「私は色弱なので平易な言葉で色の感じを伝えていただいてとても良く理解できました」と感謝されました。色はイメージで伝える。画像だけでは伝わらない、できるだけ言葉にして、ということの大切さを痛感しました。
ちょうどBSテレビでは視覚障害と葛藤する写真家のドラマが進行中です。そのタイトルがTRUE COLORS。んー、どういう意味なのかな。正しい色なんてない、色は色々、人それぞれに見えてる色は違うのだから、あるのはただ真実の色(true color)だけ、ということなんじゃないか、と思うのだけど。
ということで、今回は色についての話をしてみました。ではまた。(弥)