朝ドラファンとしては至福の時期を過ごしています。3つの朝ドラがシンクロしているのです。
今年の「あんぱん」、9年前(2016年制作)の「とと姉ちゃん」再放送、そして38年前(1987年制作)の「チョッちゃん」再放送。これを夫婦二人で毎日のように3つ続けて観ています。
この3つ、共通点があります。実話が元、女性主人公が地方から東京に移住、戦争を挟んで人生が大きく変化。何しろ3人の歳が近いんです。
黒柳朝(チョッちゃんのモデル)…1910(明治43年)—2006(平成18年)享年96歳。黒柳徹子の母。
小松のぶ(あんぱんのモデル) …1918(大正7年)—1993(平成5年)享年75歳。やなせたかしの妻。
大橋しず子(とと姉ちゃんのモデル) …1920(大正9年)—2013(平成25年)享年93歳。暮しの手帖創刊者。
10歳しか離れてないんですね。だから銀座あたりできっとすれ違っているはずだし、もしかしたらお互いに知り合いだったかもしれません。業界も近いですし、実際に永六輔はこの3人全てと交友がありました。
NHKがこの3つを同時期に組んだのは偶然ではないように思います。前作があまりの酷評だったこともあり、起死回生、今作を援護射撃するように、戦後80年の記念の年に終戦直後の東京を描いた似たような作品を並べて朝ドラの多重構造化を狙ったんじゃないでしょうか。え、もしや、残り1ヶ月、この3人が出会うような伏線回収的ストーリーが組まれているのでは、自分自身の幼少期まで登場させる脚本家中園ミホのことですから、そんなサプライズがあってもおかしくない。まさか、ありえないかな。
今年は昭和100年にして戦後80年。1957年昭和32年生れの私ですが、こないだちょっとショックなことがありまして、30前の人から「野沢さん、昭和32年生まれっていうのは戦争中ですか」と聞かれました。若い人にとっては、もう昭和は20年代も30年代も一括りで昭和なんですね。自分自身は戦争を知らない子供たちだと胸を張ってばかりいましたが、考えてみるとGHQの占領が終わって独立国としての主権を獲得してからたった7年後に生まれているのですから、まだまだ戦後処理の真っ只中にいたんですね。荻窪駅のガード下で傷痍軍人がハーモニカを吹いている姿など普通に覚えてますから、今の若い人から見れば戦中派に間違えられても仕方ないことなのかもしれません。
男の私はつい理屈っぽくこう社会的意義みたいな観点で語ってしまいますが、愚妻は方言比較みたいな捉え方をしているようで、特に幼い頃に夕張で育った彼女にとって、チョッちゃんでの北海道弁はやたらに懐かしいらしく「なんも、なんもだ」ってマイブーム化しています。(弥) (文中敬称略)