倶樂部余話【420】新たな国内仕入先とは(2023年10月1日)


 この秋は過去最大の向かい風が私たちを襲っています。超円安という強烈な向かい風です。何円上がった下がったという単純な毎日の為替レートではなくて、世界各国の物価の変動や各国間の通貨の均衡を加味した「実質実効為替レート」というのがありまして、これが実際の円の実力を示す指標になるのですが、日銀から最新の実質実効為替レートが発表されまして、ついに53年前にデータを取り始めて以来最低の値を示したというのです。観測史上初、という言葉は気象の世界では近頃しばしば耳にしますが、まさか経済指標で観測史上最低、とは驚きです。53年前というと1970年、大阪万博の年で、まだ1ドル=360円の固定相場制の時代です。円安を武器にトヨタ、ホンダやソニー、松下といった日本製品が欧米に羽ばたいていく時代で、その頃の欧米の輸入品はまだ舶来品と呼ばれて一部の金持ちだけの高額な憧れの品。アップダウンクイズの賞品は夢のハワイへご招待でした。

 そんな53年前と円の力が同じなんて。かつてはJapan as No.1とまで称賛された我が国は一体いつの間にこんなに弱っちくなっちまったんだ、と情けなく思います。53年前と一緒になってしまった一番の原因はずっと日本だけ物価が上がらなかったからです。だから本来なら輸入業者は思いっきり値上げしないとやっていけないのですが、価格競争に敏感な日本ではそんなこともできず、コストの上昇に値上げが追いつかないので、結局自らの利益を削るしかないということになります。いくら値上げしても利益率は上がらない、という悪循環が続きます。

 愚痴ばかり言っても仕方ない、策を練らないと。じゃインポートに頼らず国内での商品調達に切り替えたらどうだろう。でも今さら同質化した商品の価格競争に巻き込まれたくないし、何よりもかつてのように魅力的な素晴らしい商品を供給してくれる卸売業者がどんどん消えてしまったので、数々の展示会を回って楽しいものを見つけたとしても、仕入れのできる商品=勝てる商品がなかなか現れてこないんです。輸入がだめならいっそ輸出はどうだろう。アイルランドに売れる日本製品はないだろうか。すぐに見つかるくらいなら誰でも手を出すし、これには相当な準備と資金、そしてリスクが伴います。

 そんな中、一昨日のこと、顧客のIさんが雑談に見えまして、「いよいよ手持ちのネクタイが全部ダメになってきた、あの締めるとキュッと音のするDのようなしっかりしたネクタイ、どっかにないでしょうか」さらに「それから、ふんわり薄手で長く巻けるカシミアのマフラー、当時3万円ぐらいだったと思うけど、今買おうと思ったら8万円もして、さすがに手が届かない。どうしよう。」というご相談。考えてみましょう、と返事したものの、思案にくれること、丸一日。答えがなにもないのも申し訳ないので、とりあえず、私物の中からIさんに譲れそうなものを物色してみようか。と、思った瞬間、何かが頭の中でピカッと光ったんです。これ、私だけでなく、昔からの顧客に広く呼びかけたら、結構な数のネクタイやマフラーが集まるんじゃないだろうか。私の目利きがあれば正しい仲介ができる自信はある。35年間の店の積み重ねが生きる。これ私のできることのひとつになるんじゃないだろうか。と思い始めてしまったんです。別の観点から言うと、従来顧客を商品調達の新しい仕入先として活用する、円安の影響を受けない魅力的な仕入先の開拓です。つい昨日思いついたばかりです。

 私が過去にお売りしたかつての名品で他人に譲ってもいい、という品物を提供してください。有償で引き取り、私が欲している方に仲介します。ボランティアではなくちゃんとビジネスとしてやっていきたいので、まずは警察に行って古物商の申請をしてきます。許可が出るまで少し時間がかかるようなので、スタートは11月からにして、当面はネクタイとマフラー・スカーフに限リます。古着屋をやるつもりはありませんが、ゆくゆくはアランセーター、ダッフルコート、ダウンウェアなども視野に入れています。許可がないうちでも法に触れない範囲内でご相談には乗れます。いろいろ持ってる古い顧客ほど頼りなんです。ぜひご協力ください。

というのが、今回の倶樂部余話です。なんかいきなり興奮してますが、ご容赦。さあ今日から10月、忙しくなるぞ。(弥)

追記 準備が遅れていて、年明けのスタートとなる見込みです。(2023.11.01.記す)