倶樂部余話【417】どうしても分からないこと、ってありませんか(2023年7月1日)


 どうしても分からないこと、ってないですか。もしかしたら分からないのは自分だけなのかもしれないんですが、私はこんなことが分からないんです。

 ドナルド・トランプ。「AV女優との不倫の口止め料」と「アメリカ合衆国大統領」とを結びつけた世界一最低な男。許せないけど、でもこういう人物が存在してしまうこと自体は分かるんです。分からないのは、こんなとんでもない人物を支持する人たちがいる、ということ、それも相当な数です。前回の大統領選では7000万人以上がトランプに票を投じているんです。アメリカ人は何を考えているのか、どうしても分かりません。こんな最低の人間を自国のトップに据えようなんて、アメリカ人は恥ずかしくないのかなぁ。理解できません。

 ふるさと納税。これがどうしても分かりません。税金には受益者負担の原則というのがあります。例えば私の家のゴミは静岡市が処理をしてくれます。そういう行政サービスを静岡市がしてくれるので静岡市に税金を払います。当たり前ですよね。また、海外からの旅行者には消費税が免税となりますが、これは海外の観光客には消費税納税で日本国から受ける利益がないからです。なのでその消費税は帰国時に自国に対して納めるのです。どうして自分の住んでいない市町村に自分の地方税を払えるんでしょう。しかもその動機は高額なおまけの誘惑です。各自治体はおまけの誘惑合戦、反対に人口の多い都市部の自治体は本来得るべき地方税が入らないので税収減で大迷惑。こんな原理原則に反した訳のわからない制度を政府があおる、というのも解せません。私にはふるさと納税は富裕層を優遇した体のいい脱法行為としか思えないのですが、でも、ここからこんなにいい返礼品をもらった、って皆さん自慢気に話しますよね。理解できないんです。

 マイナンバーカード。不思議な名前です。私の番号はマイナンバー、あなたの番号もマイナンバー、笑えます。わかりやすく12桁の戸籍番号でいいじゃないですか。これからはひとりひとりの戸籍に番号を振ってあらゆることをその番号で管理しますから、その証拠になるカードを持っててくださいね。これ強制です、国民の義務です。これでいいじゃないですか。というか、私はすでに戸籍はとっくに固有の番号によって管理されているものとばかり思ってました。国勢調査だってやってるんですから。でもそうじゃなかったんですね。2万円のニンジンぶら下げてそれでも普及が進まない、って、そもそものやり方が間違ってます。もたもたしてるとまた「消えた年金」が起こりますよ。欠陥の上塗りばかりやってることも分からない。

 異次元の少子化対策。一体何が異次元なのか。4次元でタイムマシンにでも乗るのか。そもそもなんで少子化対策が必要かと言うと、人口が減るからである。人口を増やすには、生まれる子供を増やす以外にもっと現実的は方法がある、移民です。アメリカもヨーロッパも移民が国力増強に寄与した歴史を持っている。世界には生活に困っている難民がたくさんいます。これを積極的に日本で受け入れて人口を増やす。なぜこれがもっと議論されないんだろうか。それが分からない。入管が難民を笑いながらいたぶり殺しておいてそれでも開き直っている、こんな情けない国に移民は来てくれなくなりますよ。

 365日の歩行者天国。うちの商店街の考えていることが分からない。目の前の道のことです。土日祝日のホコ天をさらに平日も、つまり365日雨の日も風の日もずっと昼間の9時間で車をストップする、ということで昨日から始まりました。一体何が天国なのか、分かりません。車(これは来街客だけでなく業務車両も含まれます)に不便を強いてきた繁華街が衰退していった例は世界中で枚挙に暇がありません。それがわかっていて、なのに今更どうして。明治の時代に煙害を恐れて鉄道駅を市街地から遠ざけた地元の実力者、また、最近でいうなら、誰も喜んでいない英国のEU離脱、と、似ているものを感じます。将来起こりうるデメリットを過小評価した間違った議論、時代の流れを見誤った愚の骨頂、と言ったら言い過ぎでしょうか。私も商店街のメンバーなので、あんまり強く批判するのは嫌なのですが、ここまで私が強く言うのは、この措置の犠牲者が仲間から出たからです。営業不能に陥った弁当屋が全日ホコ天実施の開始日と同時に店を閉めました。それでいて商店街はキッチンカーを誘致するらしい。商店の繁栄を支援するはずの商店街が閉店の引導を渡す、とは、あんまりです。何がなんだかさっぱり分からない。

 昔の私なら、結びの言葉として、誰か分かる人、教えて下さい。というセリフで締めくくったところでしょう。でも、いいんです、分からなくても。分かろうとしなくていいんです。世の中にはどうやっても分からないことがいくつもあるんだということを悟れる歳になってきたということでしょうか。大切なのは分かることではなくて、分からないことを分からないと、堂々と言えることなんじゃないかな、分かったふりをせずに。
 かくして、私、分からないことがどんどん増えるばかりの毎日なのであります。(弥)