倶樂部余話【422】コンランのこと(2023年12月1日)


今回のテーマはコンランです。が、たまには、ある日の日記風にだらだらと書いてみようと思います。

夏に静岡を訪ねてきた翻訳家の友人と一緒に立ち寄った鷹匠のヒバリブックスで衝動買いした本が「羊の人類史」という分厚い翻訳本。まだ半分までしか進んでないんですが、読んでるうちに羊肉が食べたくなって仕方がない。それからもう一つ、この秋まだサンマの塩焼きを食べてない、そういえば見かけないなぁ。で、羊とサンマ、このふたつがどうしても食べたい、と、ランチであちこち探しているのに、なかなか実現しないのです。

さて、とある11月の水曜日、快晴。今日の予定はオープン直前の麻布台ヒルズでの開業レセプションに19時に行くこと。時間があるのでどっかで紅葉のいい景色を見てから行こうかな、と、調べますと、沼津の香貫山というところの木々がいい感じで色づいているらしい、ということで、とことこと沼津駅まで参ります。

駅前を探せば羊肉はなくてもサンマにはありつけるだろうと、高をくくっていたのですが、ない、見当たりません。ググると香貫山方向に少し歩くといい店があるみたい、と歩き始める。なんだか地図の縮尺を見間違えたみたいで、相当歩いた末に着いたお店は長蛇の列。並んでる人にサンマありますかね、と聞くと、ここはみんな寿司が食べたくて並んでるよ、としか答えてくれない。さんざん並んだ末にサンマがないってことじゃそこで帰るわけわけにもいかないし、と、やむなく諦めてたまたま数軒先にあった韓国料理屋に飛び込む。とてもいいお店で、道筋の相談をしたら、すぐさまタクシーを呼んでくれた。

タクシーで香貫山中腹の駐車場まで一足飛び。こりゃ歩いてきたら日が暮れてたわ。更に山道を登ること30分、展望台にたどり着く。富士山から駿河湾、眼下には色づき始めた紅葉、秋の絶景を堪能しました。静岡市だとほとんどどこでも富士山が臨めるけれど、沼津市街では愛鷹山が手前に鎮座していて富士山が見えないんですね。沼津の人たちが香貫山を富士見のポイントとして大切に思っている、そんな愛着を感じました。茶店のおじさんに下りの近道を教わり、とんでもない急坂を降りて、バス停へ。そして沼津駅に戻ります。結果的には、最短最楽で香貫山登山を楽しめたわけで、まあ良かった良かった。今日はいい日だ。再びとことこと湘南電車で上ります。

目指すは麻布台ヒルズに旗艦店を移転オープンするザ・コンラン・ショップThe Conran Shop。ここでコンランについて触れますね。テレンス・コンラン卿(1931- 2020年)は、モダン・ブリティッシュ・デザイナーとして知られた人物。ザ・コンラン・ショップは「英国デザインは古臭いだけ」という固定観念を覆し、彼の手掛けた多くのレストランは「イギリス料理はまずい」という常識を打破しました。私がコンランにハマったのは2000年を過ぎたあたりで、2004年1月のロンドン滞在では、まる二日間コンランの手掛けた施設ばかりを回ったものです。ミシュランビルのコンラン・ショップ(現在は閉店)では昔の小学校の教室にあったようなまん丸い壁時計を衝動買い(ずっと紺屋町の店に飾ってましたね)、セヴィルロウのレストランその名もサルトリアで頂戴した巻き尺を模したアッシュトレイ、テムズ川沿いでコンランが手掛けた再開発エリアのデザインミュージアム(現在は移転)で見つけた古いハビタのグラス、などなど、思い出の品々とともに、感動の二日間でした。日本でも、西新宿の旗艦店を始めコンランショップは数店あり、コンラン卿の没後は日本法人として和モノにも目を向けた独自の品揃えも増えて、そしてこの度麻布台ヒルズの目玉ショップのひとつとして旗艦店を移転しての開店となったわけです。

そんな憧れのコンランでしたが、しかし私とは無縁。それがなんでレセプション、ですよね。はい、仲を取り持ったのはやっぱりアランセーターです。一昨年山形の米富繊維で実現したモーリンのアランセーターのレプリカニット(ブランドはthisisthesweater)、これが新しいコンランショップで取り上げられることになったのです。モダン・ブリテン・デザインの中で存在するアランセーター、感激です。とっても間接的にせよ、コンランと縁が持てるなんてこんな嬉しいことはない、是非コンランにお礼が言いたいと、レセプションの末席を汚すお許しをいただいたというわけです。

せっかくだからモーリンのアランセーターをたくさんアピールしたい、と、私はモーリンのアランセーターを来て、会場中を歩き回りました。何人か著名なデザイナーやディレクターの姿もお見受けしましたから、分かる人には目に止めていただけたんじゃないか、と思います。衣食住のライフスタイルショップとして旗艦店の完成度は実に素晴らしいもので、併設のレストランでは、肉も魚もビールもワインも美味、舌鼓を打ちました。時の経つのを忘れ、久々に新幹線の最終に飛び乗りました。

それで、羊肉とサンマには未だにありつけず、のままであります。(弥)

備考: コンランショップでのthisisthesweaterの販売は、12/8(金)から1/8(月)の期間限定(PopUp)として展開されます。