倶樂部裏話[6]結婚記念日(2003.5.8)


 皆様のご結婚記念日に当店からお届けするグリーティングカードには、私が手書きである一文を書き添えています。例えば"The 2nd, Cotton Wedding!"(2周年、「綿婚式」です!) というように…。
 ときどき、お客様から、「この『○周年は○婚式』というのは、どうやったらわかるの?」というお尋ねをいただきます。ネタを明かすと、私の手元には写真のようなアイリッシュリネン製のティータオルがありまして、それを見ながら記入しているというわけです。これを眺めていると、欧州のモノの価値の順番などをかいま見ることができてとても興味深く感じます。
Wedding

☆ 1ST.—PAPER(紙)…初めて迎える結婚記念日、1周年は「紙」。でも、ペーパー・ウェディングというと、なんだかペーパー・カンパニーみたいで、書類上だけの婚姻、という意味にも勘違いされそうですね。
☆ 2ND.—COTTON(綿)…繊維の中で最もなじみ深いコットンですが、こんなに早く登場するとは、少し意外です。
☆ 3RD.—LEATHER(革)…革も思いのほか登場が早いように思いますが、それだけ、日本よりも欧州の方がなじみのある素材だということでしょうね。
☆ 4TH.—FRUIT or FLOWRRS(果実、花)…どちらにしても、バスケット一杯にして、お祝いしましょう。
☆ 5TH.—WOODED(木)…革より木の方が上、というのは、狩猟民族的ですね。木造家屋に住む農耕民族の我々にはあり得ないことに思います。
☆ 6TH.—SUGAR or IRON(砂糖、鉄)…甘い砂糖と、錆の出る鉄、では、ずいぶん印象が違いますね。どちらを選択するかは、そのご夫婦次第ということで…。
☆ 7TH.—WOOL or COPPER(羊毛、銅)…ふわふわのウールと、緑青が吹き出す銅。これもそのときの夫婦の状態次第でしょうか。
☆ 8TH.—BRONZE or POTTERY(青銅、陶器)…青銅は、銅+錫(すず)+亜鉛+鉛の合金。オリンピックの銅メダルは、ブロンズですから、8周年が銅婚式となりますね。
☆ 9TH.—POTEERY or WILLOW(陶器、柳)…土からできるのが陶器。それにしても、20TH.に登場する磁器(CHINA、石の粉末で作る)と、こんなに価値観の差があるとは驚きです。WILLOWというのも、正直、日本ではなじみが薄いですよね。クリケットのバットの材料だそうです。
☆ 10TH.—TIN (錫(すず))…ティン・トイというと、ブリキのおもちゃのことですが、ここでブリキじゃいくら何でもですので、錫(すず)と呼びましょう。「結婚十周年には、スイート・テン・ダイアモンドを」というのはずいぶん定着したようですが、これは世界一のダイアモンド・シンジケートであるユダヤ系商社、デ・ビアス社が仕掛けたキャンペーンの中で、最も成功した例だそうです。宝石屋さんの仕掛けにはうかつに乗らない方が……、まぁ、お節介はやめておきましょう。
☆ 11TH.—STEEL(鋼鉄(はがね))…鉄と違って、焼きを入れた、さびないハガネです。11年目は、原点に戻って、もう一遍焼きを入れ直せ、という意味…、んな訳ないか。
☆ 12TH.—SILK or LINEN(絹、亜麻)…これはとても興味深いです。日本では、麻よりも絹の方が価値が高いと考えられていますが、欧州ではまったく同格なのです。リネンという繊維がいかに重んじられているかということがわかります。リネンは、洗えば洗うほど白くなる「聖なる布」で、教会の祭壇に掛けられる白布やキリストを包んだ聖骸布もリネンです。でも我が国では、やはり12周年は一般に絹婚式と呼ばれています。
☆ 13TH.—LACE(レース)…ここにレースがくるのはちょっと異質な感じもします。13が縁起の悪い数だからでしょうか。もちろん、ここでいうレースは、ちゃんと手作業で編まれたハンドレースということなのでしょうけど。
☆ 14TH.—IVORY(象牙)…象牙はワシントン条約で捕獲規制の対象となっていますから、現代ならきっともう少し上にランクされているかもしれませんね。
☆ 15TH.—CRYSTAL(クリスタル)…透明感や輝きはあるけれど割れたり欠けたりが怖いクリスタル。倦怠期の危機、という時期でしょうかね。
☆ 20TH.—CHINA(磁器)…ここからはいきなり5年ごとになります。夫婦も15年やりゃもう大丈夫、ということかな。でもCHINAがあって、どうしてJAPAN(漆(うるし))はないのでしょう。あまりに珍重すぎたんでしょうね。
☆ 25TH.—SILVER(銀)…皆様よくご存じの「銀婚式」です。子育ても一段落、これからは夫婦二人で仲良く歳を取りましょう。
☆ 30TH.—PEARL(真珠)…日本が産地なので深く思わないですが、欧州ではかなり貴重なものと考えられているようですね。
☆ 35TH.—CORAL(珊瑚(さんご))…これも同様で、欧州では採れませんね。南の海への憧れもあるのでしょうか。
☆ 40TH.—RUBY(ルビー)…この辺までくると、もう語ることも少なくなります。たんたんと進めましょう。
☆ 45TH.—SAPPHIRE(サファイア)…お二人とも、お歳でいうと古希を迎えるあたりですね。
☆ 50TH.—GOLDEN(金)…キンコンカンの金婚式。長寿社会ですから、将来はそう珍しくないことになるかもしれませんね。
☆ 55TH.—EMERALD(エメラルド)…ルビー、サファイア、エメラルド、はホントにこの順番の価格なのでしょうか。
☆ 60TH.—DIAMOND(ダイアモンド)…これでこの表はおしまいになっています。20歳で結婚したとして80歳ですから、結構あり得る話ですよね。当店メンバーズの最長老であるI様ご夫妻は、あと3年でダイアモンドに到達いたします。

 さあ、今はまだ「紙」の方も、仲良く「ダイアモンド」を目指しましょう。ちなみに、私のところは、あと2年で「陶器」を迎えます。(弥)