倶樂部余話【一九九】ドンザとアランセーター(二〇〇五年八月一日)


ドンザって知ってますか。かつて日本各地で漁師が着ていた刺し子の防寒着で、緻密な模様が入った柔道着のようなもの、とでも言えばいいでしょうか。生活に根ざした日本の伝統キルトのひとつです。

このドンザを日本や韓国の各地から収集して展示する、という我が国初の試みがこのたび福岡市博物館で開催されることになり、ひょんなことでこれに当店のアランセーターが関連展示されることになったのです。

ドンザもアランセーターも、もともとは日常の労働着だったものが次第に装飾性の高い晴れ着に昇華していった、という共通点があり、海に生きる者たちの過酷な生活から生まれる発想は洋の東西を問わず類似するものなのか、という担当学芸員の着想が元になって、実現したものです。

はるばる福岡から静岡まで訪ねてきてくれた彼はこう言いました。「言葉は悪いですが、アランセーターにしてもドンザにしても、一般の人からすれば、どちらも『しょーもない』モノですよね。そんなしょーもないモノを野沢さんは何年も探求して一冊の本に書き上げました。あの本に私はとても勇気づけられたのです。」その言葉に私はいたく感動し、とっておきの一枚を福岡へ貸し出しました。

アランセーターが商品ではなく展示品として博物館に並ぶのです。実に名誉なことだと思っています。この夏、福岡へ行かれる方には、ぜひともご覧いただきたい「ドンザ展」です。

(会期は200582日~925日。詳細は<http://museum.city.fukuoka.jp>まで)