倶樂部余話【十三】一年の三分の一はお休みです(一九八九年十月十日)


週休二日制もかなり定着したようです。いいことばかりではないようで、飲み屋の主人は「土曜日が一番暇になった。」と嘆いているし、ビジネスマンは六日分の仕事量を五日間でこなすため、かえって多忙になり、当店では昼間に会社を抜けて立ち寄ってくれる方が少なくなったようにも感じます。

この週末に祝日と盆暮れ正月の休暇などを合わせると、年間休日は百二十日を超えます。一年の三分の一が休み(オフタイム)ともなると、このオフタイムの服装にも三分の一の力を注いで良いのではないでしょうか。しかもオフとはいえ、取引先とのゴルフや社員研修旅行、得意先からご紹介のレストランなど、ビジネス(オンタイム)に影響のある場面は割と多いものです。街を歩けば部下にも会います。スーツと同様、オフの服装も意外に人から見られているのです。

だからといって、単に高価なブランドものを身に付けていれば良いというものでもなく、要は、オンのときにもオフのときにも共通する、その人なりの一貫した「テースト(味わい)」のあることが肝心なのだと思います。もっと言えば、オフのテーストがオンに反映されているということが、一番自然な姿であると言えましょう。(実は、「変わらない一貫したテーストで衣食住をくくる」ということは、最も無駄のない効率的なことでもあるのです。)

当店でいえば、「英国の伝統的な生活様式への憧れ」というひとつのテーストが、オンウェアにもオフウェアにも常に流れています。色や素材は年ごとに「トレンド」で変化しても、この「テースト」は決して変わることはないのです。

ということで、今回のイベントは、オフタイムのジャケットを特集しました。深まる秋、より心豊かなオフタイムを楽しみたいものです。

 

 

 

 

※はい、これも結局、イベント「オフタイム・ジャケット・コレクション」の宣伝文なのですね。文体が「ですます」調になっているのは、そんな遠慮がちな気持ちの現れだったのかもしれません。

 

記事より。「顧客数の増加に伴い、今回より宛名書きを、手書きからタックシール式に変更させていただきました。一枚一枚お届けする気持ちにいささかの変化もございませんので、何卒ご了解下さい。」という言い訳あり。