倶樂部余話【五十五】男たちよ、いくら何でもちょっと元気がなさ過ぎませんか(一九九三年十月一日)


日本初の「アイルランド・フェア」開催に要請を受けての、二週間にわたる横浜でのアランセーター販売も無事終了し、実に多くの方に世界最高の手編みニットに触れていただくことができました。また、どうしても作りたかったアランセーターのすべてをまとめた小冊子(カラー十二頁、現地取材までして完璧を求めたのでお金もかかってしまった!)もようやく出来上がりました。皆様にはご来店の折りに差し上げていますので、是非お読みいただきたいと思います。さらに方々からアランセーターの取材依頼も増え、十一月創刊の新雑誌「メンズ・エクストラ」(世界文化社)や全日空の機内誌「翼の王国」などへ掲載されるようです。

少しずつ「アランセーターのことなら静岡のあの店」という評価が全国的に出てきているようで、これはお客様にとっても、誇らしく思っていただけることだと感じています。

さて、横浜からの荷物が凱旋帰静いたしましたので、例年より二週間遅いスタートですが、いよいよ「第六回・アランセーターの世界」を開催いたします。またまた一階には白の世界が広がります。今年はポンド安&円高で二割ほど価格も下がってますし、何しろこの六月に私がはるばる現地まで取材に行った報告資料が豊富ですので、例年以上に魅力あるイベントになるはずです。今回は新聞広告を出しませんので、是非口コミでご友人などお誘い合わせ下さい。

ところで、最近お客様からよく言われることが「この店に来ると欲しいモノばかりで困るんだよ。だからあんまり行かないようにしてるんだ。」というお言葉。恐らくは無沙汰を自虐されてのお世辞半分だということは十分承知してはいるのですが、聞く方としては(もちろん悪い気はしませんが)かなり困った気持ちになってしまい、答えて曰く「お願いですから、そんなこと言わないで、ちょくちょく遊びに寄って下さいよ。『今日は見るだけ!』と言われれば私たちは売りませんから。」特に今の時期、ご紹介したい新しい品物が続々と入ってきて、お客様の反応や評価を確かめたくてしようがないのです。景気が悪いことも重々承知してはいますが、当店としても、奥様方から「あのお店ならあなたが買うだけの価値のあるものがあるはずよ」と言っていただけるような店づくりを目指しておりますので、どうか冷やかしにでも店内を覗いてみてはいただけませんでしょうか。

何しろ男たちに元気がなさ過ぎる、と思える近頃ゆえ、なかば檄を込めつつのお願いです。

※バブル崩壊で、今読むと少々痛々しい。このとき兄弟店ジャックとケントでは別会場で「トラッド・アウトレット」なる催事を企画し、なんとか売り上げを稼いでいたものだ。

 

「アランセーターの世界」は朝日新聞静岡支局の取材を受け、ローカル面に記事として紹介された。

 

「メンズ・エクストラ」は現在の「メンズ・イーエックス」のこと。