倶樂部余話【七十五】アイドマAIDMAの分業化(一九九五年九月二十日)


戦後最大級の台風も通過して、いよいよ秋本番。これから十月に掛けてが一年で最も品揃えの充実した活気ある時期です。

先日ある地方情報紙に当店を取材した記事が第一面に大きく掲載され(断っておきますが当方の広告ではありません)、会う人ごとに随分と冷やかされています。パターンオーダーに手慣れていることやレディスも充実していることなどが伝わって、興味を持たれて来店される新しいお客様がかなり見受けられ、改めてメディアの力の大きさを思い知らされます。

販促理論に、アイドマAIDMAの法則というのがあります。これは、人が購買に至るまでの心理過程を分析し、
 
(attention)注目=あらっ、これいいじゃない!?
(imagination)想像=次の旅行に…、手持ちのあの服と…、
 
(desire)欲求=欲しいな!
 
(memory)記憶=素材は?価格は?サイズは?ブランドは?
 
(action)行動=コレください!
 
……という心の流れを言います。

店の飾り付け、陳列や接客会話などはこの流れがうまく進むように仕掛けていくのですが、このごろどうも「アイドマの分業化」が目立つようになってきました。「雑誌に載ってたコレください」というもので、AIDまでは在宅、MAからだけが店の分担、というパターンです。

雑誌の情報源が店の取材なのにもかかわらず、店の言うことよりも雑誌の記事の方に信頼を置く消費者が増えているわけで、私自身は多少の憤りを覚え、チト情けない気もしますが、地方と中央、口承とメディア、どう考えても情報電波力でかなうはずもなく、きっと私が怒ることのほうが間違いなのでしょう。

雑誌とは共存共栄、顧客の喜ぶことはやってみること、これが少し頭の柔らかくなった私の今の気持ちであります。