英国北方シェットランド島のニット、ジェイミーソンとフィンランドのダウン、ヨーツェンが相次いで来日。東京で商談に臨みいろんな話を聞きました。
シェットランド島では、作れるセーターの数が激減しています。以前から北海海底油田の基地だったこの島では、近年周辺海域の掘削数が急に増えて、労働者が増加、港にはホテル代わりに古い客船が三艘停泊したままです。今までセーターの編み立てをしていた熟練の島のおばちゃんたちもこの浮かぶホテルで働くので、セーターの現場が人手不足に陥ってしまいました。特に増えたのが日本の石油会社の掘削で、震災原発事故以来、過多な中東依存からの脱却が急務なようです。日本の石油のせいで自分の店にセーターが入ってこないのか、と思うと複雑な心境です。
ヨーツェンでの話はもっと深刻で、ダウン(羽毛)の原料価格が昨年の三倍になったというのです。加えてユーロが30%上がりましたから円換算ではなんと四倍です。理由は複合的でして、鳥インフルエンザのまん延、中国の自国内需要の急増、そして、鴨、雁、ガチョウ、アヒルの食用肉としての不振が挙げられます。高価でパサパサの北京ダックは安くて滋味溢れるチキンに人気を奪われたのです。欧州ではフォアグラが以前ほど売れなくて雁の飼育数が減り、副産物としてのダウンも大幅な生産減です。需要は急増なのに供給は激減ですから、そりゃ相場は急騰するはずです。原材料が四倍になってもウェアの売価はそんなに上げられませんから、来年の商売はかなり厳しいものになりそうです。
静岡の小さな店も北海油田やフォアグラの影響を受ける。世界は意外と小さく繋がっているのですね。(弥)
注:上記の話題はダウンの市場価格が高騰した理由を述べたものです。ヨーツェンでは、シベリア産の最高級マザーグースダウンを完璧な洗浄と選別の上で使用しており、その雁(ガチョウ)は食用に供されることはありますが、中国の北京ダックとも欧州のフォアグラとも無関係です。
また、シェットランド島の人手不足の件も同業他社の事情を聞いた話であって、ジェイミーソンのファクトリーは幸い町なかから離れているため、次冬向けの生産に充分な人手の確保はできているとのことです。