【倶樂部余話】 No.211 シャツを直そう (2006.8.1)


 スーツやパンツは、リペア(お直し)の依頼の多い代表選手です。靴の修理の持ち込みも増えました。それらに比べて「まだまだ少ないな」と感じるのが、シャツのリペアです。オーダーで作ったシャツに限ることなのですが、衿や袖口が擦り切れてきたらそこだけ新しく作り替えることができる、というのは、案外知られていないことなのかもしれませんね。
 ただし、運良く同じ生地の在庫がまだ残っているということは稀で、大概の場合には白無地の生地で代用することになります。つまり衿と袖口だけが白いという変わったシャツは、もともとはリペアを好む英国の倹約家のシャツとして登場したものなのです。このシャツ、見掛けが牧師(cleric)っぽいことから「クレリックシャツ」と呼ばれていますが、これは全くの和製英語でして、実際の聖職者の衣装とは無関係な造語なのです。まあ、要は英国紳士にはケチが多いということでしょうか、エルボーバッチ(ひじあて)と同様に、これも英国的倹約主義が生んだファッションのひとつなのだと言えるでしょう。
 一年で一番暇な月の八月はリペアを積極的に受けることにしました。修繕や寸法直しだけでなく大改造も相談に乗ります。面倒がらずにどうかご持参下さい。(弥)