【倶樂部余話】 No.218 春は名のみ? (2007.3.7)


 ♪春は名のみの、風の寒さよ~♪(「早春賦」吉丸一昌・詞)との歌がうそのように思えるほど、異様に暖かい今年の春です。例年以上に日々の寒暖の差が大きいので、「今日はいったい何を着ればいいの?」と毎朝悩んでいる方も多いことでしょう。
 初夏の日あり真冬の日あり、の春のこの時期は、もちろん春という季節感を出すことに留意はしつつも、春夏秋冬の四季にわたる手持ちの服をすべて総動員して掛からないと毎日の気候の変化に対応しきれません。洋服ダンスの前にいると、奥にしまっておける服がなくて、すべての服が手前側にどんどん溢れてくる、という感覚です。だから、春の装いには、その人がいかに系統立てて四季のワードローブを効率的に買い揃えているか、はたまた季節ごとにてんでバラバラに刹那的な服の買い方をしてしまっているか、の差が、真価として現れることになるのです。ひとつのコツは、秋のうちから春に必要なものまで視野に入れながら手を着けておくことのように思います。
 これも要は気の持ちようで、この四季の服の総動員を「面倒臭い」と思わず、前向きに「楽しみ」と考えましょう。春は季節の中で一番いろんなコーディネートが試せる楽しい季節なのだ、と積極的に思い込んでしまうしかないのです。
 これはオーダーメイドを注文する心持ちに近いものがあります。なんだかんだと決めることが多いから面倒だ、と躊躇していたらそれは苦痛以外の何者でもありませんが、あれこれ悩めることこそオーダーの醍醐味、とすれば、これほどに楽しいことはないのです。(そういう私は、実はレストランや居酒屋でメニューを決めるのが大の苦手で、これを楽しいと感じることはあまりありません。)
 春の装いもオーダーメイドも、苦痛にすぎないかそれとも楽しみと感じられるか、そこに関与できるのが私たちの役割でしょう。ご相談には乗れることと思いますよ、メニューのこと以外でしたら…。(弥)