倶樂部余話【七十一】金曜日とビスポーク(一九九五年四月一八日)


オジサンたちの最近の関心は「カジュアル・フライデー」。帝人、伊藤忠などの通勤風景が新聞紙上を飾り、今後も実施企業は増えるようで、紳士服業界も需要拡大の好機と攻勢中です。自由な服装=自由な発想が目的のはずが、ジーンズやゴルフウェアはダメとか、具体例付き事前講習会などは、高校の服装規定のようで、いかにも日本的ですね。

人に見られるためのキチンとしたカジュアル、実際にはかなり高難度かと思いますが、男性が服装にもっと関心を払う契機となってくれることを期待してます。確かにいくつかコツはありますが、要は「習うより慣れろ」&「失敗は成功のもと」と、果敢に挑戦する気持ちが肝心でしょう。

片や、ヤングビジネスマンに今興味が高いのが「注文仕立ての背広」。だらだらソフトスーツのバブル的なかっこ悪さに気付き始めて、英国調の自分の身体にぴったり合った納得のいく一着への欲求が強くなっています。「セヴィルロウ」の地名が持つ意味もかなり知られてきましたし、「カスタム」とか「テーラー」そして「ビスポーク=bespoke/『話をして』の意から転じて『高級お誂え服』のこと(←→ready-made)」などの言葉が再び注目され始めています。

シニアがカジュアル、ヤングが注文服。従来と逆のこの流れは、これからの新しいカギではないかと感じています。