倶樂部余話【375】あざやかな場面(2019年12月28日)


アニュアル・イベントと言いますか、年一回の恒例行事が私にも数多くありますが、その中で、ああなんて幸せなんだぁ、と、最高の幸福感に浸っているあざやかな場面が私には三つすぐに蘇ります。自分の姿を別の自分が見ているような不思議な光景が頭の中に浮かびます。

8月の下旬、山中湖での高校テニス部OB/OGの合宿。70代の大先輩から高校出たての若い後輩たちまでが、一緒になってボールを追いラケットを振る。43年前の初参加から毎年変わらぬ光景。テニスコートに立つ私の姿が見えます。ああ今年もまたここでみんなとテニスができる、幸せだなぁ。

12月の暮れ、私の誕生日に大船の居酒屋で催される忘年会。高校一年時のクラスメイト男子4名女子2名の6人がコアメンバー。41年前の出会い以来、家族ぐるみの付き合いになるので、宴には各々の家族や共通の友人などが加わりいつも大賑わいの宴会になリます。人間六十も過ぎればそれなりにいろいろあります、後悔もあれば苦労もある、そして同じ顔が集まり毎年おんなじ話に笑い転げている自分がいる、今年もみんなとこの場面にいて、一年一度酔っ払う。これ以上の幸せは他にない。

1月下旬。アイルランドの首都ダブリンで催される大展示会。その中を忙しそうにちょろちょろ歩き回っている一人の日本人が見えます。あの顔を初めて見たのは24年前だな、しかしまあなんと幸せそうな顔をしているんだ、とその場面を見ている天上の誰かの声が聞こえてきます。2日間で20社近くと商談をしますから、実際は幸福感に浸っているような余裕もないはずなのですが、その時々ふとした瞬間瞬間に、ああ今年もここに立っていられる、幸せじゃんね、と思うのです。時差ボケのせいなのかもしれませんが。

この三つ、今だから言える共通点があります。これらのためには店をも閉める、まあダブリンは海外出張ですから許されるとしても、前者ふたつも場合によっては店を閉めても出掛けます。私にとっては冠婚葬祭以上に大事なイベントなのですから。
人は亡くなるときにいくつかの場面が走馬灯のように頭の中を駆け巡ると、よく言われます。この三つの場面は間違いなくそうなることでしょう。

皆さんはどうですか、一年に一度、幸せだなぁ、と実感するあざやかな場面、いくつぐらい思い浮かびますか。そのために笑っちゃうような子供じみた無茶なわがままを通したりしてませんか。お会いしたときに聞かせてほしいです。

今年一年のご愛顧に感謝します。良いお年をお迎えください。(弥)