倶樂部余話【一二五】イギリスとアメリカ(一九九九年一一月一日)


コーラやハンバーガーを改めて持ち出すまでもなく、戦後五十年、私たちはアメリカの影響を強く受けてきました。

しかし、忘れがちなことですが、約百三十年前、明治維新の頃から日本のお手本はイギリスでした。今とは比べものにならないほどの少ない情報量の中で、明治人は英国を学びました。

このイギリスとアメリカ、一口に英米と言ってしまいますが、この両国の性格にはかなり違いがあります。倹約家VS浪費家、古い物好きVS新し物好き、金より地位VS地位は金で買う、あるがままにVS見た目こそ大切、フェアプレイVS結果がすべて、歴史に優越感VS歴史に劣等感、旧宗主国VS旧植民地…、枚挙に暇がないほどです。

そしてこの対比は、まるで我が国の、明治大正VS昭和平成、だとも思えます。私も二十代の頃はかなりの米国大好き少年でしたが、今になって思うとかなりアメリカに洗脳されていたな、と感じます。今さら教育勅語は御免ではありますが、しかし成熟期となった日本は、米国一辺倒の呪縛を解いて、もう一度英国をお手本にし直してもよいのではないでしょうか。「戦争を知らない子供たち」は、案外と、質素で厳格な明治の人たちをカッコよく感じてはいないでしょうか。