【倶樂部余話】 No.242 「これでいい」「ここがいい」 (2009.3.5)


 かつては「わけあって安い」が売り物だった無印良品、その現在の商品コンセプトは「これいい」なのだそうです。「これいい」ではなくて「これいい」、含みのあるうまい表現だなぁと思います。例えば私はあるお菓子の包装に「日本一おいしいラスK」と書いてあると、押し付け感を覚えてしまうのですが、つまり「これいい(のだ)」にはちょっと自分本位なエゴな匂いがするのに対して、「これいい(でしょ)」は少し理性的な感じがします。決して「これでいいや」と妥協しているのではなくて、「これ」の「」の感度と精度を極めよ、というメッセージなのだと思います。
 極論すると、世界中のすべての品を使い比べでもしない限りは「(世界で一番)これいい」と断言はできないのですから、実はどの店にしても、当店も含めて、その品揃えは「(うちの店には)これいい」なのです。もちろん無印良品と当店ではその「」は判断の指標が全く異なります。それがその店の性格の違いであり、品揃えのフィルターが多様であればあるほど店ごとの面白さが生まれます。
 要するに、モノを決める前に店を決めるという取捨選択があり、その選別に際して、店というのは「ここいい」ではいけなくて、絶対に「ここいい」でなくてはならないのです。
 モノも大事だがそれより先に店が大切、「ここいい」という店で「これいい」というモノを手に入れる、というのが理想の姿ではないでしょうか。(弥)