かつては「わけあって安い」が売り物だった無印良品、その現在の商品コンセプトは「これでいい」なのだそうです。「これがいい」ではなくて「これでいい」、含みのあるうまい表現だなぁと思います。例えば私はあるお菓子の包装に「日本一おいしいラスK」と書いてあると、押し付け感を覚えてしまうのですが、つまり「これがいい(のだ)」にはちょっと自分本位なエゴな匂いがするのに対して、「これでいい(でしょ)」は少し理性的な感じがします。決して「これでいいや」と妥協しているのではなくて、「これで」の「で」の感度と精度を極めよ、というメッセージなのだと思います。
極論すると、世界中のすべての品を使い比べでもしない限りは「(世界で一番)これがいい」と断言はできないのですから、実はどの店にしても、当店も含めて、その品揃えは「(うちの店には)これでいい」なのです。もちろん無印良品と当店ではその「で」は判断の指標が全く異なります。それがその店の性格の違いであり、品揃えのフィルターが多様であればあるほど店ごとの面白さが生まれます。
要するに、モノを決める前に店を決めるという取捨選択があり、その選別に際して、店というのは「ここでいい」ではいけなくて、絶対に「ここがいい」でなくてはならないのです。
モノも大事だがそれより先に店が大切、「ここがいい」という店で「これでいい」というモノを手に入れる、というのが理想の姿ではないでしょうか。(弥)