【倶樂部余話】 No.246  靴とセーター、作ろう! (2009.7.1)


 七月の「作ろう!」特集は、紳士靴とカシミアセーターの二枚看板。製造のパートナーは、靴が宮城興業(山形県南陽市)、ニットはUTO(本社・東京都港区、工場・山梨県中央市)ですが、さてさて余話ではどっちのファクトリーのことを書こうかなぁ、と悩んでいた矢先、宮城興業から一通のメールが入りました。「昨日UTOさんが見えました」 えーっ、両社に交流があったなんて話は知らないけどなぁ…。聞けば、双方初対面にもかかわらず、誂えモノという共通項から、当店のことを肴にしつつ話は弾んだ、とのことでした。えーい、それならこっちも二社をまとめて書いてしまいましょう。
 思えばどちらも最初は知縁も紹介も全くないところから手探りで始まった取引でしたが、オーダー靴は五年間で五百六十足、昨年から始めたオーダーニットも一年で六十枚、と、今では欠かせない大事な取組先となりました。製糸工場を改造した古い靴工場とブドウ畑の真ん中にぽつんとある小さなニット工房、と、2社の生い立ちも規模も違いはありますが、私はどちらも当初から「このファクトリーは世界でもどこも真似のできない、世界でココだけのすごいことをやっています」と吹聴し続けてきました。私ごときがそう叫んだところで眉唾程度にしか思われなかったでしょうが、近頃はNHKの番組(BSの「経済最前線」で宮城興業が登場)でも紹介されたりして、私の発言もまんざらホラではなかったことが実証されつつあります。
 この二社の特色を語り出すといろいろと出てくるのですが、なかでも特筆すべきはその価格でしょう。まるで展示会サンプルのように一つずつ違うものを短納期で作り続けるのだから普通は市販品よりも割高になるはずなのに、どちらも「ホントにこれでいいの?」という値段を出してくれます。もっともそのために誤解も受けるようで、「あそこは三万円代の靴しか作れないんだ、と言われたのが一番悔しかったですね。十万円の靴はうちでもよそでも作れます。でもどこがこのレベルの注文靴を三万円代で作れますか。」その通り、だから日本だけでなく、ミラノの展示会に出展したり、ニューヨークや上海のお店にまで販売を拡げることができるんですよ。
 UTOにしても、カシミアの原産地・内モンゴルまで直接に原料手配に出かけたり、糸の仕入れ方法に独自のアイデアを産み出したり、と、小規模ゆえのメリットを最大限に発揮させています。
 同じ「作ろう!」でも、紳士靴とカシミアセーターでは、嗜好はかなり異なります。この二つを同時開催するときっと何かしらの相乗効果が現れるのではないかと楽しみなのであります。(弥)

※現在、UTOの取り扱いはありません。