【倶樂部余話】 No.247  下取りとリペア (2009.8.1)


 世の中「下取りセール」なるものが盛んです。スーツ、靴、鞄からゆかた、はては鍋や炊飯器まで…。そして、下取り代として受け取るのがその店で使える三百円や千円の商品券なのですが、聞けば、ある会社ではこの商品券の使用率が三割以下だというのです。さすが消費者は消費のプロだなぁ、客は店側の思惑を超越するもんだ、と私は感心してしまいました。要は、下取りです、エコです、モッタイナイです、節約です、などと謳うのは店側で、客はスーツが欲しかったのではなくて不要品を無料で簡単に引き取ってもらいたかったのでして、「捨てる」という罪悪感からの解放であったわけです。受け取る商品券は換金せずとも充分に免罪符たり得たのです。
 方や、雑誌ではリペア(直し)やメンテナンス(手入れ)の特集が目立つようになってきました。これは、広告主の激減で新製品紹介の提灯記事でページが埋まらなくなったという出版界の事情かなと勘ぐったりもしてますが、流行りモノをホッピングする浮ついた買い物よりも自分にあったモノを大事に長く使い続けることに労力を費やそう、というこの傾向は悪くないと思います。靴磨きも今はシューシャインと呼ぶそうで、これが趣味にしても職業としてもちょっとした流行りでして、当店でもレザーケア用品はこのところとてもよく売れています。
 捨てるようになる品には手を出さずに、数は少なくても愛着を持って手入れしながら使い続けられる実用性の高い品を慎重に吟味して買う、という性向は今後ますます強くなります。これはなかなか当店らしいんじゃないかな、と感じているのですが。(弥)